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2008年07月14日(月) 11時32分

「転換点になれば」布川事件で司法関係者 再審請求の棄却相次ぐ産経新聞

 平成になって以降、死刑や無期懲役が確定している重大事件で、再審請求を退ける司法判断が相次いでいた。そんな中、布川事件の再審請求が東京高裁で認められたことで、司法関係者からは「転換点になれば」と期待する声も上がっている。

  【写真で見る】 「再審決定」支持を受け喜ぶ元被告の2人

 長らく「開かずの扉」だった再審制度は、最高裁が「ある程度の合理的疑いがある場合には再審を認めるべきだ」との判断を示した「白鳥決定」(昭和50年)で門戸が広がった。
 日弁連によると、白鳥決定以降、昨年までに再審開始決定が確定した主な重大事件は、死刑・無期懲役確定の6件を含めて10件。うち平成以降は、香川県で起きた「榎井村事件」(昭和21年)で、高松高裁が5年に認めた1件だけだ。
 これまで再審請求が認められた重大事件は、戦後混乱期の昭和20〜30年代のものが多く、緻密(ちみつ)性を欠いた捜査の在り方が指摘された。しかし、それ以降の事件では再審は認められていない。
 静岡県清水市(現静岡市)で昭和41年、一家4人が殺害された「袴田事件」では、最高裁が今年3月、元プロボクサーの袴田巌死刑囚の特別抗告を棄却している。
 「名張毒ぶどう酒事件」(昭和36年)や福島県いわき市の「日産サニー事件」(昭和42年)、鹿児島県大崎町の「大崎事件」(昭和54年)でも一度は開始決定を受けながら、相次いで高裁レベルで取り消された。
 元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長(刑事法)は、「『確定判決は真理なり』といわれるように3審制で審理を尽くしているのだから、再審請求については慎重に行うべき」と指摘している。
 一方、元東京高裁判事で再審請求に詳しい秋山賢三弁護士は、「『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の原則が実践できておらず、弁護側には『冬の時代』が続いていた。今回の決定が転換点になれば」と期待を寄せる。

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