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2008年07月14日(月) 10時16分

布川事件、無期懲役刑2人の再審認める…東京高裁読売新聞

 茨城県利根町布川(ふかわ)で1967年、一人暮らしの大工玉村象天(しょうてん)さん(当時62歳)が殺害され、現金が奪われた「布川事件」を巡り、強盗殺人罪で無期懲役刑を受けた同町出身の桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)(ともに96年に仮釈放)が、無罪を主張して裁判のやり直しを求めた第2次再審請求の抗告審で、東京高裁は14日、再審開始を認めた水戸地裁土浦支部の決定を支持し、検察側の抗告を棄却する決定をした。

 門野博裁判長は「新旧の証拠を総合評価すると、確定判決が有罪の根拠とした目撃証言や自白の信用性に重大な疑問が生じた」と述べた。

 戦後発生した事件で、無期懲役刑か死刑が確定した後、再審が開始されたのは5件しかなく、いずれも無罪が確定したが、これらは終戦後約10年の間に起きた事件だった。現行刑事訴訟法が定着してから起きた今回の事件で東京高裁が再審開始を認めたことは、捜査のあり方にも問題を投げかけそうだ。

 布川事件は有力な物証がなく、確定判決は、桜井さんと杉山さんの自白や、事件当日、現場近くで2人を見たという住民らの目撃証言によって、有罪と認定していた。第2次再審請求で弁護側は、新証拠として、事件が起きた時間帯に、玉村さんの自宅近くで桜井さん、杉山さんとは容姿や着衣などが異なる2人の男を見たという近隣女性の捜査段階の供述調書(検察側が証拠開示)を提出。東京高裁は、桜井さんと杉山さんを見たとする目撃証言の信用性には「重大な疑問がある」と述べた。

 また、弁護側が提出した、被害者の殺害方法に関する医師の鑑定書が、「布などで首を絞められた絞殺の可能性が高い」としていることから、高裁は「両手でのどを強く押した」との自白は、「客観的事実に反している可能性が高い」とした。

 そのうえで、殺害状況などに関する2人の供述が次々と不自然に変遷しているのは、「実際に体験したことではないためと考えられる」と述べた。

 また、被害者宅の室内の破損状況が、2人の自白と整合しないことも指摘。「自白には無視することのできない顕著な変遷が認められ、重要部分に客観的事実に反する供述が含まれている」として、自白の信用性を否定した。

 2005年9月の水戸地裁土浦支部決定は、医師の鑑定書に基づき、「絞殺の可能性が高く、自白の中心部分が死体の客観的状況と矛盾する」と指摘。再審開始を認めたため、検察側が即時抗告していた。

 今回の決定に対し、検察側が5日以内に特別抗告すれば、最高裁で改めて審理されるが、特別抗告しなければ、再審開始が決まる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080714-00000004-yom-soci