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2008年07月14日(月) 10時14分

布川事件の再審決定認める 確定判決から30年目 東京高裁産経新聞

 茨城県利根町布川(ふかわ)で昭和42年、大工の男性が殺害され現金を奪われた「布川事件」で、強盗殺人罪で無期懲役刑が確定した元服役囚の桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)の第2次再審請求の即時抗告審で、東京高裁(門野博裁判長)は14日、再審開始を認めた水戸地裁土浦支部決定を支持し、検察側の抗告を棄却した。

  【写真で見る】 「再審決定」支持を受け喜ぶ元被告の2人

 門野裁判長は、目撃証言と自白の信用性に重大な疑問があると判断した。
 有罪確定から約30年を経て、再審が開かれる可能性が高まった。日弁連によると、無期懲役刑が確定した事件の再審開始決定は過去に3件ある。
 布川事件は、自白が唯一の直接証拠だった。また犯行時間近くに2人を現場周辺で目撃した計6人の証言があり、確定判決は、この目撃証言を、自白を補強する状況証拠としていた。今回の再審請求では、自白の任意性と信用性が主な争点だった。
 自白は「下着で口をふさいでから、手で首を絞めて殺害した」とするものだった。しかし、弁護側は第2次再審請求で「遺体の状況から、帯状のもので首を絞めた後、下着を口に詰めたと推認できる」とする医師の意見書などを提出、「遺体の状況は自白内容と矛盾する」と主張していた。
 支部決定は「自白の中核となる殺害の手順について、遺体の客観的な状況と矛盾する可能性が高い」と弁護側の主張を全面的に認めた。さらに自白については、変遷が多く、捜査員が供述を誘導した可能性を否定できないとして、「虚偽の自白をさせられた疑いがあり、真実性に問題がある」と判断していた。
 また、6人の目撃証言についても、「時間や場所がはっきりしておらず、信用性に疑問がある」と証拠価値を否定していた。

 【布川事件】昭和42年8月28日、茨城県利根町布川の大工、玉村象天(しょうてん)さん=当時(62)=が自宅で首を絞められて殺害され、現金約10万円が奪われた。同年10月に別の事件で逮捕された桜井昌司さんと杉山卓男さんが殺害を自白、強盗殺人罪で起訴された。その後、2人は「自白を強要された」と無罪主張したが、1、2審で無期懲役とされ、53年に最高裁で確定した。2人は昭和58年に再審請求したが棄却。平成8年に仮釈放後の13年、2度目の再審請求を行い。17年9月、水戸地裁土浦支部は再審開始を決定、検察側が即時抗告していた。

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