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2008年07月13日(日) 11時21分

Gアテンダントの首絞め「殺すぞ」 グリーン車の連続暴行魔、早朝の死角狙われ産経新聞

 早朝のJRグリーン車内という“公共の場”で、「グリーンアテンダント」と呼ばれる女性乗務員2人が相次いで乱暴されるという、耳を疑うような事件が発覚した。走行中の電車内で女性乗務員が乱暴に遇うなどというのは初めてで、何気なく電車を利用してきた多くの女性が「日常に潜む犯罪者」に身の毛もよだつおぞましさを感じたことだろう。前代未聞の事件にJRでは「信じられない」と大きなショックを受け、再発防止の対策に乗り出している。
 ■「1人のとき狙った」「グリーン車、ほとんど人いなかった」
 事件は3月下旬と4月上旬、JR東海道線のグリーン車内で起こった。
 いずれも、走行中の車内で20歳代のグリーンアテンダントの首を絞めて犯行に及ぶという悪質な手口である。
 1人は抵抗したため未遂に終わったが、首に全治2週間の軽傷を負った。もう1人は口をふさがれた上、「静かにしろ。殺すぞ」と脅され、トイレに引きずり込まれて乱暴された。
 被害に遇ったグリーンアテンダントの目撃証言と防犯カメラの映像が決め手となり、強姦致傷と強姦などの疑いで神奈川県警戸部署に逮捕され、横浜地検から起訴されたのは、川崎市川崎区の飲食店従業員、今井卓哉被告(34)だった。
 今井被告は東京・五反田のパブで朝まで働いており、東京駅から川崎に帰る途中の車内で犯行に及んでいた。犯行を認めており、こう供述した。
 「グリーン車には人がほとんどいなかった。女性が1人のときを狙った」
 取り調べの過程で、今井被告は2件の犯行に先立つ3月中旬にも、川崎市内の駐車場で帰宅中の女性の頭を押さえつけ、「騒いだら殺すよ」と脅して乱暴していたことが判明。先月末に追起訴された。
 ■“絶えぬ笑顔”悪用…「前例ない極悪さ」
 グリーンアテンダントは、グリーン料金を払う乗客により良いサービスを提供するために配置されていた。主な業務は、車内での改札や飲食物の販売だ。
 東海道線のグリーン車は自由席で、いったん離れた席に座った2人連れに空席ができたことを知らせるなど、きめ細やかなサービスが売りになっている。
 「笑顔が絶えず、接客サービスに向いている」ことが採用基準の1つ。そのサービス精神を履き違えた酔客に絡まれるといった迷惑行為の被害はこれまでにもあったものの、今回の事件については、JR東日本の関係者が一様に「信じられない」と繰り返す。
 JRグループや大手私鉄、東京都交通局など21の鉄道事業者がまとめた平成19年度の駅員や乗務員に対する暴力行為の発生件数は、前年度比12・5%増の748件に上るが、「今回のような極めて悪質な犯罪は、過去に例を見ない」という。
 たとえ犯人と2人きりの密室状態になったとしても、東海道線の駅間はおおむね5分程度。一般的な感覚ならば、車内を安全な公共の場としてとらえ、防犯意識はそれほど高くなかったはずだが、今井被告の「悪意」はそこにつけ込んだことになる。
 ■2階建て車両の“死角”
 一方で、今回の悲劇が完全に「想定外」といえるかについては疑問も残る。JRの車内では、2年前にも類似の事件が起こっているからだ。
 18年にJR西日本の特急「サンダーバード」で発覚した事件では、乗客の女性が乱暴される被害に遇った。この事件を含めて3件の乱暴を行ったとして、被告の男(37)は、5月に開かれた大阪高裁の控訴審判決公判で、1審・大津地裁と同様の懲役18年を言い渡されている。
 高裁判決によると、サンダーバード車内での事件では、男が20代の女性客の隣に座り、「大声を出すな。殺すぞ」と脅して胸などを触った後に犯行に及んだ。欲望を満たすために男が選んだのは、トイレと洗面所だった。
 この事件では、「ほかの乗客が見て見ぬふりをしたのではないか」とする批判もあったが、一部を除いて進行方向に2人がけの座席が縦に並ぶ構造が、被害に気づきにくい要因になったとする意見もあった。
 グリーン車にも「死角」はあった。
 通勤時間帯に走行しているグリーン車は、ほとんどがフロアが上下3層に分かれた2階建てのタイプで、乗車階にあたるフロアにも席があるものの、大半の席はそこから階段を上と下に行った両方の階にある。犯行現場となったトイレのあるデッキ部分は、客席からの見通しが悪い構造なのだ。
 また、早朝の上り電車では都心部に近くなるにしたがってグリーン車は混雑していくものの、今回は東京から遠ざかっていく下り電車だった。
 サンダーバード事件後、JR西日本は一部の特急に女性専用席を導入するといった対策を取った。JR東日本でも今回の事件後、在来線のグリーン車内に監視カメラを順次取り付けている。
 「模倣犯を誘発しないため」として、JR東日本は監視カメラの可視域や、それ以外の再発防止策の詳細は明らかにしていないが、女性乗務員に相手をひるませる防犯用具を携帯させたり、警戒に当たる社員や警備員を増強するといった複数の方法を合わせて、再発防止に全力を期す構えという。
 ある鉄道関係者はこう話す。
 「犯人には激しい怒りを禁じえない。鉄道はだれでも、安心して利用できる乗り物でなけれはならない」
 今回の悲惨な事件を、「防犯面での油断は許されない」という教訓にしなければなるまい。

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