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2008年07月12日(土) 00時16分

<皇太子さま>スペイン公式訪問を前に会見(1)毎日新聞

 (1)今回のスペイン訪問にあたっての抱負をお聞かせください。皇太子さまは昨年、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任されるなど、熱心に水問題に取り組まれています。今回は「水と持続可能な開発」をテーマに開かれているサラゴサ国際博覧会に出席して特別講演もされるそうですが、博覧会では何を視察して、どのようなメッセージを伝えたいとお考えですか。水問題への今後の取り組みについても合わせてお聞かせください。また5回目の訪問となるスペインという国に対する印象やスペイン王室との交流についてもお聞かせください。

 ご質問にお答えする前に、先だっての岩手・宮城内陸地震により、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、ご遺族と被害に遭われた方々に、お見舞いを申し上げ、災害からの復旧や復興が一日も早く進むことを願っております。

 2008年サラゴサ国際博覧会の開催にあたってフアン・カルロス国王陛下および、スペイン国政府からのご招待をいただき、スペイン国を訪問できることを大変うれしく思います。ご招待いただいたカルロス国王陛下およびスペイン国政府に対して心から感謝の意を表したいと思います。今回の訪問においても、国王、王妃両陛下、フェリペ皇太子、同妃両殿下にお会いできることを楽しみにしております。両陛下にお会いするのは前回2004年に、フェリペ皇太子殿下のご結婚式に出席のためスペインを訪れて以来のこととなります。また、フェリペ皇太子殿下ご夫妻とは、両殿下が2005年6月にわが国で開催された愛・地球博をご視察になった際、東宮御所で夕食をご一緒して以来のこととなります。

 今回の訪問では両陛下、両殿下からそれぞれ夕食へお招きをいただいており、こうした温かいお心遣いに心から感謝いたします。天皇、皇后両陛下には、長年にわたりスペイン王室との交流を深めてこられました。私もその恩恵にあずかっていることに感謝をしつつスペイン王室との友情を深めていかれればと考えております。

 私のスペイン国への訪問は今回が5度目になります。初めての訪問は私が高校2年生の時でしたので、もう30年以上前になります。最初の訪問の時には、スペイン南部のグラナダに近い当時のベルギー国ボードワン国王陛下のご別荘にお招きをいただき、ボードワン国王陛下やスペインのご出身でいらっしゃるファビオラ王妃陛下、そしてそのご親族方などとご一緒に大変楽しい数日間を過ごさせていただきました。その際、ファビオラ王妃さまのご案内で、アルハンブラ宮殿を訪れたのですが、今回の訪問に当たって当時写した写真を見返していると、その時の思い出が大変懐かしくよみがえってきました。天国を想定した水の庭園の光景や、ライオンの中庭に響く噴水の音は、今でも鮮明に覚えています。厳しい乾燥地域で生み出されたイスラム文化の水に対する強い思いをこの時初めて知ったように思います。

 その後、イギリス留学中の1985年、1992年のセビリア万国博覧会、バルセロナ・オリンピック大会や、2004年のフェリペ皇太子殿下のご結婚の際にスペインを訪問しましたが、そのたびに感じるのは、豊かな歴史と文化の多様性や人々の温かさや明るさ、そしてそうした人々が支える経済社会の目覚ましい発展ぶりでした。スペインの歴史をひもとけば、そこにはケルトの文化もあれば、セゴビアの水道橋に代表されるローマの文化、そしてアルハンブラ宮殿やコルドバのメスキータなどに象徴されるキリスト教とイスラム教の融合された見事な建築文化などがあります。

 ちなみに、スペインを代表する料理の一つであるパエージャ(パエリア)も、イスラム教徒によってもたらされた料理を起源とすると、あるとき教えられました。経済、社会の面では、スペインの国内総生産は現在、世界第8位と世界経済の中でも重要な位置を占め、主要産業も食品加工、化学、自動車、観光など幅広い分野にわたっています。また、環境問題への取り組みにも力を入れており、再生可能エネルギーとして注目されている風力発電については、スペインはドイツ、アメリカに次いで発電の規模が世界第3位で、スペインの持つ高い技術が世界各国に供給されていると聞いています。今回もさまざまな場所を訪れる予定ですが、そこで多くの人々と出会い、その土地の歴史や文化に触れるとともに、発展する新しいスペインの姿を実際に見ることを楽しみにしています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080712-00000002-mai-soci