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2008年07月10日(木) 18時22分

建設現場「無災害記録」は本当か?(上)オーマイニュース

 私はエレベーター会社のフジテックで営業部のサービス残業を公益通報後、エレベーターの据え付けを行う工務部へ配転させられている。

 第1弾記事「内部告発者は本当に守られるのか」を掲載するにあたり、オーマイニュース編集部は、同社から以下の見解を得、それを注記している。

工務部の作業の安全性について
「安全衛生管理を徹底して、危険が生じないよう対処しています」

 その後、オーマイ編集部は同社へ以下の質問を行った。

 「御社が工務部で行われている安全対策の概要を教えていただけますでしょうか。」

 しかし、同社から編集部への回答はいまだにないと聞く。では先の会社の見解「安全衛生管理の徹底」は真実なのだろうか。今回は、その点について報告したい。

  ◇

■だれがゴールデンウィーク最終日に倉庫内で練習するのか?

 2008年5月6日、筆者の同僚であるI氏が建設現場で軽傷を負った。溶接作業時、溶接のアーク光により眼球に炎症を起こしたのだ。

 エレベーターの据付に溶接は不可欠であり、未熟な作業員は同じような目に遭いがちである。私も最近、溶接の特別教育を受けたが、研修受講生の何人かは、翌日も涙が止まらず苦しそうにしていたのを覚えている。眼球が炎症を起こしたのだ。

 5月下旬、部内会議でこの労働災害が議題になり、上司からも再発防止策が講じられた。その後、本件について、工務部会議(5月23日)の議事録を閲覧してみた。

 労災報告。倉庫内で、溶接作業を自己練習中にてアーク光線によって、眼球の炎症により、病院に行った。

とある。「あれ、建設現場でのできごとじゃなかったっけ?」と思い、私は別の会議(5月27日)の議事録も閲覧してみた。すると、やはり

 5月6日 I 事務所倉庫で溶接技能練習時、眼球炎症し労災となる。

とある。

 おいおい、いったいだれが、ゴールデンウィーク最終日に倉庫内で溶接の練習をするのか?

 どうして情報伝達過程でこのような著しい事実誤認が起こるのかだろうか。ちなみに、当社では、建設現場でエレベーターなどの据え付け作業をする際は、会社の出勤カレンダーとは関係なく、土曜日や祝祭日にも休日出勤することが一般的である。したがって5月6日の作業とは、倉庫内ではなく、建設現場である可能性が大きい。

 疑問に思った私は、倉庫担当者J氏に尋ねてみた。

私 Iは、そこ(倉庫内のある場所)で溶接の練習をしていて目を焼いたんですよね。
J氏 違うで。

 今度はI氏本人に問い合わせた。

私 この前現場で目を焼いたって言ってたやろ?
I氏 それで?
私 議事録では倉庫で溶接練習中になってたから、なんでかなと。
I氏 現場で起こったこととして労災にすると、ゼネコンも巻き込んで書類やら色々と面倒なんやって。

 これは、いわゆる労災かくしである。I氏の軽症は今回、労災として取り扱われている。しかし、事実とは異なる報告に基づいている。その点に問題はないのか。

 私は当社の体質を再確認すると同時に、ある事を思い出した。昨年(2007年)、ある同僚が帰宅途中に熱中症で倒れ、搬送されたと聞いたことがある。あれは本当だったのだろうか。この同僚はすでに退職しているので、確かめようがない。

(下につづく)

(記者:黒澤 弘昭)

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