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2008年07月10日(木) 15時23分

増加する学校裏サイトや犯罪予告 企業も取り組みを強化ITmediaエンタープライズ

 公式ホームページとは別に、学生・生徒が開設した非公式の匿名掲示板「学校裏サイト」が増えている。授業や部活、友達のことだけでなく、個人の誹謗中傷が書き込まれることもある。Web上の掲示板に殺人や犯罪の予告を書き込む行為も相次いでいる。

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 文部科学省がネット上のいじめに対する対応の取りまとめを発表したり、殺人予告に対して警視庁が警備体制を強化したりするといった対策も見られる。

 だが掲示板への書き込みは後を絶たない。学校裏サイトは生徒同士の口コミで広がることが多く、保護者や教師などは掲示板を見つけにくい。殺人予告の書き込みも発見は困難だ。

 こうした書き込みに対して、企業が取り組みを進め始めている。

●公開から1カ月、「学校裏サイトチェッカー」

 サイブリッジが開設した「学校裏サイトチェッカー」は、小学校、中学校、高等学校に関連する掲示板を検索、閲覧できるWebサイトだ。専任のスタッフや一般ユーザーが学校裏サイトを見つけてサイトに登録をして、公開する。地域や学校別に検索できるほか、閲覧数の多い学校の掲示板を表示する。

 「こういうサイトがあったのですね」。サイブリッジには教育サイトや保護者からの意見が、電子メールで1日10件ほど届く。サイトの開設から1カ月強で、公開している学校裏サイトの数は3000を超えた。

 サイブリッジは、このほかに、学校関連の話題が取り上げられている非公式の掲示板を約2万件把握している。学校裏サイトでは学生・生徒の間で伏せ字や隠語が使われるなど、どの学校のことが扱われているかを特定できない場合が多い。「掲示板でどの学校が扱われているかを照合し、来月中にはこれらを公開したい」(サイブリッジ広報)。

 今後の課題は、学校裏サイトと裏サイトに該当しない掲示板の線引きだ。部活動のメンバーや第○期生のみが集まる掲示板も裏サイトとして登録していたが、ユーザーから問い合わせを受けた。現在は「学校全体の内容を扱う掲示板を学校裏サイトとみなしている」(広報)。学校裏サイトの定義付けや、掲載のルール決めは課題として残っている。

 サイブリッジは「生徒同士のやり取りは保護者が見つけにくい。これを知るきっかけとして学校裏サイトチェッカーが機能すれば」と期待を込める。今後は登録サイト数の増加を目指し、NPO法人などと連携して、チェック体制を強化する構えだ。

●監視業務の延長線上にあった通報活動

 ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、掲示板の監視事業を手掛けるイー・ガーディアンは、インターネット上での自殺予告や犯罪予告などを通報するボランティア活動を開始した。

 同社は掲示板の投稿監視サービスを企業向けに提供しており、1日当たり約25万件の投稿を監視している。自殺や犯罪に関連するキーワードを自動的に見つけ、赤く反転させるシステムを利用して、有害情報を見つける。「悪質な書き込みを1日1、2件発見している」(同社)といい、これらを警察やインターネット・ホットラインセンターに通報する。

 監視スタッフは1〜2名。1日2時間程度掲示板などを見回り、有害情報の有無をチェックする。顧客企業以外の掲示板も監視し、モバイルサイトにも監視の目を広げていくという。

●相談の場も掲示板で

 掲示板で誹謗中傷を受けた学生・生徒は、たとえそれが悪意なく書き込まれたものであっても、心に大きな傷を負う。保護者や教師がそれを発見できなかった場合、生徒・学生個人での対処は難しい。

 学校裏サイトやネットいじめなどの解決に取り組む全国webカウンセリング協議会は、10代の女子児童に人気のポータルサイト「ふみコミュ!」上に、「みらクリッ!×ふみコミュ!カウンセリングルームを開設した。

 このカウンセリングルームでは、ネットいじめや学校裏サイトなどの被害に遭った子どもたちの相談を掲示板で受けつける。同協議会が認定した心理療法カウンセラー5名が掲示板に回答を書き込み、やり取りを続けることで、子どもの不安をやわらげる。

 「子どもにとって“カウンセリング”という言葉は重たい。ちょっとした不安でも気軽に相談できるオープンな場が必要」と日本青少年キャリア教育協会の佐藤仁一事務局次長は言う。ふみコミュ!内にあるSNSからカウンセラーに相談もできるが、「掲示板からの相談の方が多い」(同氏)。7月8日の開設から2日で、約20名の相談があった。

 相談員やスタッフの書き込みの横にはひまわりの絵文字を掲載し、外部からのなりすましを防ぐ。日中は7、8名の従業員で、夜は監視サービス企業に業務を委託し、不正な書き込みを防いでいる。

 佐藤氏は「子どもによる掲示板への書き込みはこれまでもあったが、今の書き込みは子どもだけでは解決できないレベル。企業や学校などの大人が子どもの環境を守る必要がある。企業が率先してこのような活動を広げていってほしい」と話している。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080710-00000072-zdn_ep-sci