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2008年07月09日(水) 15時32分

G8温暖化ガス長期目標、あいまいさのメリットオーマイニュース

 今世界が直面している地球温暖化、アフリカ開発、原油高騰・食糧高騰など世界経済、核不拡散・政治問題にどう取り組むか。洞爺湖サミットの議長である福田首相は「話し合いにより一定の方向性を出すことが求められている。環境問題を克服する第一歩だ」と意気込んでいた。

 地球温暖化問題では、温暖化ガス排出量を「2050年までに半減させる」ことを「真剣に検討する」とした2007年のハイリゲンダム・サミットからどう一歩前に出るのかが注目されていた。そして7月8日発表になったG8首脳宣言では、「50年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標を、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)締約国と共有」となった。

 要するに、「2050年までの排出量半減という目標を、中国・インドを含む世界全体の目標として採択することを求める」ということだ。

 中国やインドも巻き込んだことで、文言の上では一歩前進し、福田首相の成果する見方もある。しかし、「目標で合意」したわけではなく、「目標の採択を求める」わけだから、これから各国がどう対応するのか次第であり、そう考えると評価ばかりというわけにもいかないだろう。

 なかなか対策が前進しないことに歯がゆさを感じる面もあるだろう。地球温暖化の人為的CO2原因説で対策を進めているが、この説に疑問を呈する学者も増えてきた。

 人為的CO2原因説をとる人は、1900年から現在までの大気のCO2濃度と平均気温の関係からそのトレンドは良く一致し、自然現象だけではこの傾向は説明できないという。

 一方、この説に懐疑的な人は、西暦1000年から現在までのCO2と気温の傾向を見ると、過去にも寒冷化、温暖化を経験しており、CO2ではなく自然変動で十分説明できるという。さらには気温が上昇した後にCO2の濃度が上昇しているともいう。

 ビョルン・ロンボルグの大作『環境危機をあおってはいけない』を読んで以来、私も疑問を持っている。温暖化は極地で影響が出やすく、新聞やテレビは北極圏の映像を使って環境危機を訴えている。

 しかし、それは地球の自然変動であると北極圏研究の第1人者であるアラスカ大学の赤祖父俊一先生が『正しく知る地球温暖化』(誠文堂新光社 2008.7)で言い切った。地球温暖化の6分の5自然変動、6分の1がCO2を原因とするだろうという。

 地球温暖化問題は、IPCCの報告を鵜呑みにするのではなく、多分野にわたる研究者がもっと議論し「合意」を形成しなくてはならない。

 メデイアが温暖化原因説についてどんな報道をしたか注意して見ていたが、原因説を論議するものはなかった。7日のテレビ朝日の「たけしのTVタックル タックル国際会議」で、地球温暖化問題が話題になったとき、韓国人の金東海大学助教授が「CO2は原因ではないという説もあるが」と発言した時、他の出席者2〜3人が「それは(IPCCで)認められていること」と猛烈に罵倒していたのには驚いた。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告がそれほど揺るがぬ地位にあることを示しているとはいえ、約2500人もの学者、識者が携わりながら、科学的に十分な議論を経ないまま政治的課題になったのも事実である。

 仮に人為的CO2原因説が間違っていたとしたら、それに基づきCO2を削減しようとする対策も間違うことになる。

 そう考えると、今回の声明は「どう評価して良いか分からない」のが大方の評価であると思うが、これで良かったのかも知れない。

 もっと強力なコンセンサスを得られるまでは、エネルギー利用の効率化を先ず進めれば良いのではなかろうか。

(記者:矢本 真人)

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