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2008年07月09日(水) 11時36分

社会貢献活動は「職務」、それとも「ボランティア」?オーマイニュース

 流通業界大手のスーパー運営の大型ショッピングセンター(神奈川県相模原市)はこのほど、月に1度の店周辺の清掃活動について、パートを含む約700人の全従業員に対し、ボランティア活動として勤務時間外に実施する指針を固め、6月11日から実施に踏み切った。

 従業員には参加・不参加が一目でわかる形で事後報告を求めるなど強制的な色合いがにじむ内容。活動をともにした人からは「ボランティアって任意じゃなかったの」などの疑問の声も上がる。一方、全国で初めて非正規雇用者を組合員として受け入れた労組は沈黙を続けている。

 同ショッピングセンター(SC)では、かねて毎月11日を中心に従業員が月1回15分程度、主に勤務時間内に店舗周辺のゴミを拾い、雑草を取り払うなどの清掃活動を進めてきた。従業員は掲示板や机上に張り出された捺印欄に印鑑を押し、参加したことを事後報告していた。

 こうした取り組みは同SCを運営する大手スーパーが、会社自ら進んで行う社会奉仕活動として1991年にスタートし、全国各地のSCでも行われているという。

 ところが今年に入って、「活動は本来、従業員が自らの社会貢献活動として行う位置づけのはずだ」とする考えが同SC内で浮上した。すなわち、「あくまで従業員がボランティアとして勤務時間外にやるのが原則で、出勤前15分もしくは退勤後15分を使ってやるべきだ」(事前の説明集会で副店長)との考えに変わったのだ。その結果、今月から勤務時間外での実施に踏み切った。

 あわせて参加の形も変わり、それまで各自が自由な時間、場所で清掃していたのを、決められた時間、場所に各自が集合して清掃をする形となった。

 そのうえで、「参加率は何とか100%を目指したい」(副店長)として、参加者が掲示板や机上の帳簿に印鑑を押す事後報告は従来どおりのまま存続している。

 社会貢献活動が、職務なのか、個人の自発的活動なのかは根本的な問題だ。同ショッピングセンター(SC)では従来は「職務」だった。だから勤務時間内だった。これに対し、6月からは、個人意思にもとづく自発的活動に変わったのだ。会社は個人意思を後押しする立場に変わったといえるだろう。

 こうした職務に似た形が残りつつのボランティアに対し、ある女性従業員は「ボランティアって自発的なものじゃないの?」と釈然としない様子。また別の女性従業員は「ちょっとやりすぎだと思う。勤務時間外なのにね」といぶかしげに話した。一方、若手の男性従業員は「会社が決めたことだし、仕方がない。上には逆らえないから」と苦笑の表情を浮かべた。こうした従業員にとっては、社会貢献活動は「職務」だからやってきたことであり、今も「勤務時間にカウントされない職務」なのだろう。

 社会貢献活動の取り扱いについて、同社の労組は現在も沈黙を続けている。同労組は2006年夏、パートなど非正規雇用の従業員4万4000人を労組としては全国で初めて組合員として迎え入れ、「非正規雇用の待遇改善につながる一つの動き」として当時、社会で注目を集めていた。

(記者:吉永 公平)

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