記事登録
2008年07月09日(水) 19時22分

<下関通り魔>11日最高裁判決 被害者「苦しみ終わらず」毎日新聞

 5人が死亡、10人が重軽傷を負った山口県下関市のJR下関駅通り魔事件(99年9月)で殺人罪などに問われ、1、2審で死刑判決を受けた運送業、上部(うわべ)康明被告(44)に対する上告審判決が11日、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)で言い渡される。「裁判が区切りを迎えても、苦しみは終わらない」。事件から9年近くがたっても、理不尽な凶行に巻き込まれた人たちの心が晴れることはない。【新里啓一、北村和巳】

 「極刑になったとしても、私の痛みは一生なくならない」。同県長門市の元教員、永藤登さん(77)は、判決を前に静かに語った。ホームで列車を待っていた永藤さんは、上部被告に包丁で切りつけられ、顔や手などに大けがをした。骨まで達した額の傷跡は、今も表情を変えるたびに痛む。

 1、2審判決によると、上部被告はレンタカーで駅コンコースに突っ込んで7人をはね、永藤さんら8人を包丁で襲った。仕事や妻との関係などが思い通りにいかず、両親や社会への憤りを募らせ無差別殺人を決意したとされる。

 弁護側は「社会に迫害されてきたとの妄想に支配され心神喪失状態だった」と無罪主張し、上告審でも責任能力が争点となった。永藤さんは1審からほぼすべての公判を傍聴したが、被告の謝罪の言葉は心に響かず、動機についても疑問は消えていない。「精神状態を争うためだけに9年を浪費したようなもの」と無力感にさいなまれる。

 東京・秋葉原で17人が殺傷された事件と、状況が酷似しており、とても人ごととは思えなかった。「下関の事件で極刑が確定していれば事件は起こらなかったのではとも思う。ただ、どちらの事件も『社会が悪い』と片付けてほしくない。親子のきずなをしっかり築くことが、事件防止につながるのでは」と話した。

【関連ニュース】
誰でもよかった:秋葉原通り魔事件/上(その1) 孤独な心情、サイトに
通り魔予告:ネット書き込みで容疑の男逮捕--新潟中央署 /新潟
TDL殺人予告:威力業務妨害、容疑の少年逮捕 /千葉
通り魔の現場 /青森
不審者:児童生徒に「魔の手」97件 県警が注意呼び掛け /福井

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080709-00000074-mai-soci