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2008年07月09日(水) 11時32分

SaaS競争をオンプレミスに持ち込むGoogleのアプライアンスTechTarget

 「Microsoft Exchange Server」およびIBMの「Lotus Domino」と競合する可能性があるGoogleのエンタープライズアプライアンスが開発中のようだ。

 これまでMicrosoft対Googleの戦いの焦点は、SaaS(Software as a Service)とWebベースのアプリケーションへのシフトだった。しかしGoogleのエンタープライズアプライアンスは、この戦いをオンプレミス(自社運用型)に持ち込むことになりそうだ。そこはMicrosoftとIBMの縄張りであり、VAR(付加価値リセラー)とSI(システムインテグレーター)にとってはサービスを提供するチャンスが最も大きい分野でもある。

 Forrester Researchの主席アナリスト、ロブ・コプロウィッツ氏によると、Googleのエンタープライズアプライアンスの狙いは理にかなっているという。大企業や大規模組織が一夜にして、オンプレミス型ソフトウェアからSaaSに移行することはあり得ないからだ。

 「変化はゆっくりと訪れる」とコプロウィッツ氏は話す。「相手は大規模でミッションクリティカルなシステムなのだ。たとえ機が熟しているとしても──実際にはそうではないが──そして企業側の準備が既に整っているとしても、移行には時間がかかるだろう。このため、短期的にも長期的にもGoogleには企業に対して影響力を拡大するチャンスがある」

 IBM Lotus部門のパートナー、PSC GroupでLotusソリューションを担当するアレクサンドル・カサボフ副社長によると、Googleのエンタープライズアプライアンスの成否は、その機能に掛かっているという。「Google Sitesのようなコラボレーションソフトウェアを提供するアプライアンスは、単なるメールサーバよりも顧客に訴求するだろう」と同氏は語る。

 PSC Groupでサプライチェーン管理を担当するディレクター、デビッド・ホー氏は、「Lotus Notesのユーザーは、これを電子メールシステムとは見ていない。多数のアプリケーションが動作するバックエンドシステムと見ているのだ。“電子メール機能も付いている”くらいにしか考えていない」と話す。

 Lotus Notesは、Dominoのクライアントである電子メール/コラボレーションソフトウェアだ。「Googleのエンタープライズアプライアンスがどういった機能を備えるにせよ、NotesやExchange Serverと競合するレベルには達しないだろう」とカサボフ氏は語る。

 「Googleの製品は中小企業に適している。非営利組織でもGoogleを採用する動きが見られる。Lotusは主に大企業市場をターゲットにしており、高度なセキュリティと連携機能を提供する」(同氏)

 Burton Groupの調査ディレクター、ピーター・オケリー氏も同意見だ。

 「Googleの製品は、他社のエンタープライズアプライアンスと似通ったものにはならないだろう。Googleがこのビジネスに参入するには膨大な経費が掛かる。同社がそこに進出するとは思えない」とオケリー氏は話す。

 なお、Googleは本記事に関する取材申し込みに応じなかった。

 同社は既に、「Google Search Appliance」で企業のファイアウォールの内側に足掛かりを築いている。同製品は社内に配備するターンキー型のハードウェア/ソフトウェア統合ソリューションで、社内文書に対してGoogleのインデックス作成機能と検索機能を適用できる。

 SaaSとWebベースのアプリケーションへのシフトは非常にゆるやかなものであり、また、Googleのエンタープライズアプライアンスも有望かもしれない。しかし、Google、Microsoft、IBMなどのベンダーがエンタープライズ顧客獲得を目指して争う最終的な戦場はやはりホステッドサービスの分野であろう。

 「若い従業員たちは既に、Webベースの電子メールやホステッドWeb 2.0サービスを利用するのに慣れているため、SaaSをあまり抵抗なく受け入れるだろう」とオケリー氏は話す。しかし年長の従業員の場合は、「大きな抵抗を示すだろう」と同氏は言う。こういった従業員は既に大量のデータを社内に保存しており、オンプレミス型ソフトウェアが提供する堅固な機能の利点を享受しているからだ。

 「競争は顧客にとって良いことだが、少し混乱も起きるだろう」とオケリー氏は付け加える。

 コプロウィッツ氏によると、Googleのアドバンテージは、オンライン市場での経験、マルチテナント型アーキテクチャを備えたサーバに対する理解、そして大規模で効率的なデータセンターだという。一方、MicrosoftとIBMは「巨大なインストールベースと堅固な機能」が自慢だという。

 コプロウィッツ氏が共同でまとめたForrester Researchの報告書「Get Ready for Collaboration in the Cloud」(クラウド内でのコラボレーションに向けて)は、オンプレミス型ソフトウェアの「かなりの割合」がホステッドサービスに移行するのに伴い、市場での新たな戦いが差し迫っていると指摘する。

 「このパズルのすべてのピースを持っている者は誰もいない。非常に興味深い戦いがもうすぐ始まろうとしている」と同氏は述べる。

  元の記事
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080709-00000036-zdn_tt-sci