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2008年07月08日(火) 13時39分

「地球温暖化で蝶の6割が北へ移動」米国の生物学者が衝撃の警告ダイヤモンド・オンライン

 洞爺湖サミットの主要議題となっている地球温暖化問題。その影響がすでに「生態系全体に及び始めている」と警鐘を鳴らす生物学者がいる。国際連合IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第3次評価報告書(2001年)に主幹著者として参加した科学者、カミール・パルメザン博士(テキサス大学准教授)である。

 アメリカ議会やホワイトハウスで地球温暖化に関するレクチャーを行う機会も多いパルメザン博士は、特にイーデス・チェッカーポイントという蝶の研究で知られ、「その生息の変化から温暖化の影響が生態系全体に広がっていることが分かる」と指摘する。具体的には、昨年秋時点で「欧州に生息する57種の蝶のうち、すでにその6割が北へ移動していた」という。

 同博士いわく、「この10年間で、何千人もの生物学者が、大洋システム、熱帯システム、ツンドラシステムなどで900以上の生物の変化を報告している」。これは、「地球上のあらゆる地域で、すべての種の生物に起こっている変化だ」と警鐘を鳴らす。

 パルメザン博士の母国、アメリカは、温暖化の認知に抵抗してきたことで知られる。そのことについては、「温暖化対策を優先事項に挙げてきた英国やフランスに比べると、その理解は10年以上の後れを取っていると言わざるをえない」と認める。

 アメリカが出遅れた原因としては、「科学を軽視するブッシュ政権の宗教観や、政権内に石油産業出身者が多いことが影響した」と読むほか、「アメリカ本土では温暖化の深刻さが実感できないことも背景にある」と指摘する。「(2006年に)アラスカに行った際、気温が2〜4度も上昇しているのに驚いたが、こうした変化は本土の人びとにはわかりにくい」と補足する。

 また、「アメリカの最大の問題点は、消費者が排ガス量を抑える動議付けとなる政策がないことだ」と語る。英国では、自動車税が低排ガス車には課されてない。

 ちなみに、現在、多くの国で原子力発電に移行すべきという意見が再び増え始めているが、パルメザン博士は「ウラン資源も限られている」としてそうした考えに否定的だ。さらに、「他の代替エネルギーも効率と生産性の面では課題が残る」と指摘する。「生活を変える以外に究極の解決策はない」というのがパルメザン博士の持論だ。

(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)

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