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2008年07月07日(月) 09時00分

IEA幹部が大胆予測!「原油暴落はもはやない」ダイヤモンド・オンライン

 原油相場のあまりの高騰ぶりに、近い将来の“暴落”を予測する声が高まっている。しかし、国際エネルギー機関(IEA)のチーフエコノミスト、ファティ・ビロル氏は、「数年前の1バレル50ドルといった原油安の時代への回帰はもはやありえない」と断言する。

 ビロル氏の見立てでは、「今回の原油価格高騰は需給ファンダメンタルズ(基礎的条件)によって引き起こされたものであり、投機家たちはその流れを増幅させたにすぎない」。つまり、「単なる投機バブルではない」と主張する。

 同氏いわく、原油価格高騰の原因は大きく分けて二つある。ひとつは国際石油資本(メジャー)の弱体化と産油国の生産制限という供給面の問題。もうひとつは、いわずもがな、中国やインドに代表される新興国の経済成長に伴う需要急増という問題である。

 順を追って説明すれば、メジャーについては、「中東諸国で保有する油田が成熟期を過ぎて枯れ始め、ここ4〜5年間で生産量が落ちている」と指摘する。ならば若い油田を探せばいいのだが、産油国がことごとく国有化しており、アクセスできない。「メジャーはアイデンティティ危機に陥っている」として、今後、「いくつかのM&Aが起きる」可能性も示唆した。

 問題はメジャーの供給能力が低下する中で、「産油国の多くが、価格を高く保つために生産量を制限している事実だ」とする。ただ、サウジアラビアが6月に増産を約束したことについては、「事態をいい方向に持っていく可能性がある」として一定の評価を下した。

 一方、需要面では、「今後20年間の石油需要拡大の約60%は中国とインドが占める」との見通しを示した。ことに中国では「クルマ普及に伴うガソリン需要の爆発的な増加が予測される」として、「北京政府は補助金による石油製品への価格統制をやめて、市場の原理に委ねることで結果的に価格を上げて、需要を緩和すべきだ」とした。

 最近の1バレル130ドル〜140ドル台という原油価格の水準については、「世界的な経済危機すら引き起こしかねない危険水域である」と警鐘を鳴らす。「すでにアフリカの原油輸入国ではGDPが年々3%ずつ下がっている」という。

 解決策としては、とにかく「産油国の生産量増強と消費国のエネルギー効率追求しかない」と繰り返す。その一環として、「原子力の有効活用も検討すべき」と強調する。ただ、巷間期待されるバイオ燃料に関しては、「いずれ交通燃料として7〜8%のシェアを確保するようになる」と見つつも、「土地利用や効率性、そして地球温暖化対策の面で最良の解決策かどうか分からない」と疑問を呈していた。

(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)

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