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2008年07月06日(日) 09時44分

日雇い労働者向け「あいりん銀行」の解散を検討 大阪市産経新聞

 大阪・西成の日雇い労働者らの預金を受け付ける「あいりん貯蓄組合」(通称・あいりん銀行)の解散について大阪市が検討を始めることが5日、わかった。預金残高はピークだった平成3年の約11億5000万円から今年3月には約7億9000万円に減少。利用件数も約8万4000件(3年度)から約1万9700件(19年度)に激減している。同様の事業を行っていた東京・山谷の貯蓄組合は「使命を終えた」として3年前に解散しており、市は「あいりん銀行も見直しの時期を迎えた」としている。

 市によると、解散を検討する理由は、法的な不安定さと利用者の減少。あいりん銀行は、もともと「国民貯蓄組合法」を根拠に設立されたが、この法律は昭和38年に廃止された。このため、金融機関としての資格はなく、現状は、預金を市立更生相談所長名義で別の金融機関に一括で預金し形態を維持している。この形態も平成17年4月のペイオフ解禁で全額保証されないなど不安定な状態にある。

 あいりん銀行の現在の利用者は約6500人。バブル期は1日6000件あった日雇い仕事は現在3分の1程度しかないうえ、労働者の高齢化で、毎日仕事ができる人も少なくなっているため、利用者は減少している。

 あいりん銀行は日雇い労働者らの預金を広く受け入れるため、身分証明のための住民票などは必要なく、窓口で名前と生年月日を申告し、印鑑を持っていれば「口座」が作れる。この点も「身元がわからないので、犯罪で得た資金を預けられる危険がある」との見方もあるという。

 また、西成の釜ヶ崎解放会館など3カ所の建物に3600人以上が住民登録していた問題をきっかけに、市は昨年3月から簡易宿泊施設でも一定の生活実態があれば住民登録できるとの指針を示したことで、この地区で住民票がないまま口座を持てる利便性にも意味が薄れているという。

 あいりん銀行の業務は市の委託を受けた民間団体「民友会」(職員11人)が行っており、市が支出している委託料は年4300万円(20年度予算)で、見直しの対象にしている。

 ■あいりん銀行 昭和37年10月開設。身分証明の書類がなくても口座開設ができ、市中銀行並みの利子も付くが、1店舗しかないため、預金の引き出しは窓口でしかできず、キャッシュカードやATMはない。多くの場合、預金通帳は銀行が預かっている。全体で約6万6500口座あるが、現状では残高1000円未満で1年以上出し入れのない「睡眠口座」が約6万口座にのぼっている。

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