記事登録
2008年07月05日(土) 00時00分

<6>悩み話せる場が必要読売新聞

 ◆主婦らで「サロン」 昨春発足
和やかなムードで、悩みを聞くサロンのメンバーたち

 「誰に相談しても理解されずつらかった」

 小林市堤の喫茶店・ギャラリーカフェ円山。世間話が一段落すると、自営業女性(52)が過去を打ち明け始めた。家族が亡くなり、うつ病を発症。対人恐怖症となって幻聴も起きた。他の7人の女性は相づちをうちながら、耳を傾けた。

 集まったのは、同市の主婦ら13人が昨年4月に発足させた「ひばりサロン」のメンバーたち。毎週木曜日に保健所や知人からの紹介で、この日の自営業女性のような相談者を受け入れている。メンバーには元看護師ら話を聞くための専門知識を持つ人もいる。

 県が西諸県地域で行った調査によると、「家族にストレスを感じるか」との質問に「ある」と回答したのは7割。県小林保健所の蛯原幸子・健康づくり課長は「介護疲れや、夫婦のトラブルなど家庭の問題は、日ごろ顔を合わす近所の人には相談しづらい」と説明する。

 「幼なじみには、抵抗感があって相談できなかった」。過去を打ち明けた女性は「悩みを理解してもらい、サロンに救われた」と話す。サロンには、家族を介護する悩みを聞いてほしいと、都城市から定期的に足を運ぶ女性もいる。人間関係に悩む30歳代男性も訪れた。

 サロン代表の元看護師、本田澄子さん(69)は「会には聞き上手がそろっている。悩みを引き出してあげたい」と話す。

 悩みを早めに打ち明けることの大切さを指摘する声は、医療現場からも聞かれる。

 「最近、心身をむしばまれている人が多い」。宮崎市の住宅街で内科医院を開業し、14年間地域医療に携わってきた石川智信さん(55)は、そう感じている。

 石川さんは、これまで数人の患者の自殺に直面した。

 70歳代の男性患者は診察のたびに「寂しい」と漏らしていた。妻が認知症で施設に入り、独り暮らしだったため、老人クラブに参加することを勧めたが、自宅で自殺してしまった。夫に先立たれ、うつ病になり、治りかけた時に自殺した60歳代の女性もいた。

 「診察に来る患者の半数は孤独、家庭問題や仕事のストレスなどが原因で、体に異変が起きたり、うつ病になったりしている」。悩みに気付くことで、治療がスムーズに進むことが多いと考える石川さんは、診察の際に「何かつらいことはないですか」と一言、尋ねる。患者の気持ちを軽くし、信頼関係を築く一歩にもなるという。

 「薬だけでは心も体も癒やされない。自殺を減らすには、悩みを打ち明ける場所が必要」と、石川さんは提言する。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/news/20080807-OYT8T00530.htm