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2008年07月05日(土) 09時00分

医療ビジネスで潤うカメラメーカーの“意外な好景気”ダイヤモンド・オンライン

 「デジカメメーカーが、医療機器で大繁盛している」と聞いたら、不思議に思うカメラユーザーは少なくないだろう。

 高齢化などによる医療機器需要の増大を受け、現在、医療ビジネスが過熱している。そこで気炎を上げるのが、富士フイルムホールディングス、オリンパス、コニカミノルタホールディングス(06年にカメラ事業撤退)、ペンタックス(今年HOYAへ吸収合併)、キヤノンなど、これまでデジタルカメラで世界的なシェアを取って来た精密機械、情報機器メーカーだ。

 デジカメ市場は現在も成長を続けているが、国内はすでに過当競争に陥っており、ここ数年間に撤退したメーカーも多い。しかし、各社はカメラ事業と並行して、実は医療ビジネスでも着々と収益を稼いで来た。医療機器は、モノによっては1台数百〜数千万円もする「超高額品」。世界的なシェアを持ち、利益率がカメラ事業を大きく上回っている企業も多い。

 彼らが成功している理由は、カメラ事業で培った精度の高い光学・精密技術を、医療機器に活用できるため。高度なテクノロジーがないと勝ち残れないので、これまでは新規参入者も比較的少なかった。

 実際、各社の医療事業は驚くほど好調だ。主力のフィルムが大幅に落ち込んだ富士フイルムは、04年に中期経営計画「VISION75」を策定。医療機器などの成長分野に経営資源を集中した結果、見事「V字回復」を達成して、07年度には売上高、営業利益とも過去最高を記録した。

 オリンパスの医療事業は連結売上高の3割強を占め、営業利益率は3割弱にも達するから驚きだ。HOYAと合併したペンタックスは、合併前の医療事業の営業利益が全事業の半分程度を占めていたほど。カメラ事業からの撤退したコニカミノルタも、医療事業のお陰で売上高微増を維持する。

 では、実際に売れているのはどんな製品か?

 「内視鏡」では、消化器内視鏡でオリンパスが世界シェア約7割を誇る。ハイビジョン画像で毛細血管まで鮮明に見え、処置具を入れて粘膜の組織採取や止血、早期がんの切除も可能だ。富士フイルム(フジノン)の「経鼻内視鏡」は「吐き気がしない」と患者に大人気。ペンタックスは、初めてメガピクセルCCDを搭載した消化器内視鏡システムに注目が集まる。

 「医療画像機器」では、長らくX線写真のフィルムや現像機を手がけてきた富士フイルムとコニカミノルタ(旧コニカ)が強い。X線で撮影した画像を読み取りデジタルに変換するCR(デジタルX線画像診断システム)や、それらのデータを蓄積して院内のネットワークで共有できるPACS(医用画像情報システム)では、富士フイルムが全国の大病院を制している。かたやコニカミノルタは、「これに負けじ」と小規模診療所や動物病院を開拓中だ。キヤノンは「X線デジタルカメラ」で独走している。

 白内障で失った視力を回復させる水晶体「眼内レンズ」が得意なのはHOYA、その傘下に入ったペンタックスが得意なのは「人工骨」である。強者連合誕生で、HOYAの医療事業は今後格段にパワーアップする。

 世界を席巻したデジカメのみならず、実はこんな成長分野でも気炎を上げているとは、まさに「デジカメメーカー、恐るべし」である。

(ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

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