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2008年07月05日(土) 15時02分

<エビ養殖詐欺>出資額に応じ6ランク分類…競争心あおる毎日新聞

 フィリピンでのエビ養殖事業に絡む出資金詐取事件で、「ワールドオーシャンファーム」(東京都品川区)会長、黒岩勇容疑者(59)=組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕=らが、出資者を出資額に応じて「エグゼクティブ代理店」など6ランクに分類し、上位ほど紹介料や報奨金を多く受け取れるシステムを採用していたことが分かった。警視庁などの合同捜査本部は、競争心をあおって資金集めをしていたとみて詳しい手口の解明を進めている。

 捜査本部の調べでは、ワ社は05年3月ごろから全国で説明会を開催し、07年7月までに約3万5000人から約849億円を集めたとされる。ワ社の内部資料によると、出資者との契約には匿名組合方式を採用。養殖事業に1口10万円から出資を募集し、利益を出資者である匿名組合員に配当金として支払うと説明していた。配当は10日ごとに払い、1年間で出資額の2倍の高利回りが得られると宣伝していた。

 ワ社関係者によると、出資者は金額に応じ▽組合員▽代理店▽総代理店▽スーパー代理店▽ウルトラ代理店▽エグゼクティブ代理店−−に分類。原則として組合員は10万〜30万円程度、代理店は勧誘した出資者を含めて40万円以上、総代理店は200万円以上、スーパー代理店は1000万円以上、ウルトラは6000万円以上、エグゼクティブはウルトラを5人抱えることが条件だった。

 新たな出資者の獲得に成功すれば、「情報料」と呼ばれる紹介料や報奨金を受け取ることができたうえ、自分と紹介者の出資額を合計した額でランク上位に昇格することもできた。

 また、情報料もランク別に設定され、エグゼクティブの場合、最大で出資金の19%を受け取れるシステムになっていた。お盆や年末年始の時期に紹介すると通常の情報料にプラス3%のボーナスが付いたという。

 最終的にウルトラ代理店まで昇格した男性は「ゲームをやっている感覚だった。養殖なんてどうでもよかった」と振り返った。【武内亮、町田徳丈】

 ▽匿名組合 商法で定められた出資形態の一つで、出資者(匿名組合員)が営業者に出資し、利益が配当される方式。出資者は名前を出すことなく資産運用ができる利点がある。一方で、元本保証はなく事業が破綻(はたん)した場合は多額の損害を被るおそれもある。約1万9000人から約490億円を集めた平成電電の出資金詐取事件(07年)でも利用された。

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