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2008年07月04日(金) 13時06分

根付き始めた子育て支援「石川スタイル」オーマイニュース

 子育て先進県の取り組みとして2005(平成17)年度から始まった石川県のエンゼルプランは、2006年1月から企業を巻き込んだプレパス事業を実施している。



 これは子どもを3人以上持つ世帯に対し、協賛店舗から割引特典などが受けられるプレミアムパスポートを発行して経済的な子育て支援を行うものである。

 2008年5月22日現在、対象世帯の89.2パーセントに当たる1万4769世帯が申請。協賛店舗数は、2007年度末で1930店舗にのぼる(数字は北陸中日新聞の記事より)。

 この事業は「子育てにやさしい企業推進協議会」という商工会を中心とした組織だが、行政もその中に加わっている。業種は金融機関からガソリンスタンドまで幅広い。意識して利用すれば生活費は結構楽になるような気がする。

 最近、子どもが生まれた姪(めい)も、このパスについては既知のことだったようだ。「でもだからと言って3人産もうとは今考えられないなあ」と言う。

 既に3人以上いる世帯にとっては魅力でも、複数の子どもを持つという要因としては薄いというところだろうか。

 さて協賛店は現在年間5000円の協賛金をこの協議会に支払っている。県では本年度より、既加入店舗は3000円、1企業で16店舗以上が協賛する場合は各店舗あたり1500円とする。

 この協賛金の使い道を協議会事務局にメールでお尋ねした。それによると、プレパスのカード作成や協賛企業の情報を載せた情報誌作成などの費用に充てているとのこと。協賛店にとっては直接的なメリットは無いものの、対象店舗にアンケートをとって「PRになった」「社会的貢献ができた」「お客さんが増えた、喜んだ」「従業員の意識が向上した」といった返答を得ているとのことであった。また、この協議会の活動についての詳細は子育てにやさしい企業推進協議会のホームページにて閲覧できる。

 地域力の一角として地元企業が子育て支援に参加する意義は大きい。行政の子育て支援は税金を財源とするが、これからの消費者、これからの労働力として人を育てる視点を企業も持つという、その地域力に期待したい。しかし協議会が言うように、企業側としては協賛金を払った上に消費税以上の割引、毎日がお客さま感謝デーであるこの制度にメリットはあるのだろうか。

 早くからこのプレパス事業に参加している地元の大手スーパーにメールでお尋ねした。

———現在プレパスの利用状況は?

 プレパスの対象世帯は石川県の総世帯の3パーセントと言われているが、実際の利用者数は弊社の総客数の約4パーセントとなっており、高いと感じられる。

———企業として導入でプラスに感じられること、反面負担になっていることは?

 スーパーの場合は「まず価格ありき」で、プレパスが固定客化、集客と言った面ではメリットは感じられない。また、子育てよりも、環境へのやさしさが企業イメージとなっていることもある。しかし子ども連れの来客は大歓迎であり、今後プレパス対象者のご意見ご要望からの商品化や売り場づくりなどに反映させていきたい。

   ◇

 自店舗の損得よりもまず地元企業としての信用や責任を優先しているというところではないかと感じた。また「顧客の4パーセント」という一部の層よりも、マイバッグポイントをつけトレー、パックの回収をしてくれる顧客全体にかかるサービスに関心が高いというのもうなずけるお返事であった。

 私がいつも行く美容室にも早くから店舗前に大きなポスターを設置しているので、髪を切ってもらいながら聞いてみた。この店は小さい子を持つお母さんのカット料金は半額である。さらにプレパスで子どもは1割引きだという。そうしたサービスで固定客が集まるのか聞くと、3人の子どもを持つ人は少ないが、ママ友の口コミで来る人もあるという。

 でもすごい割引率で損をしないかと聞けば、「うちの先生はそういう方面に関心が深いから」と言う。思わず「えらいね!」とうなってしまった。

 県では協賛金の変更のほかに、パスポートの期間を1年から3年に延ばし、さらなる活用を目指す。また、本年度から子育てタクシーの導入など利用者からの意見も取り入れて新しい支援にも乗り出すという。しかしプレパスのような企業努力による子育て支援が地域の子育て運動の意識づくりに育っていけるのかは、対象世帯が恩恵を受けるというだけでは伸びてはいかないのではないだろうか。

 先のスーパーの店頭に最近新しい広告が見えるようになった。「ポイントを子育て支援に寄付できます」とある。

 対象者以外の意識改革がこの運動を支えていくのではないか、そう感じている。

(記者:曽野 千鶴子)

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