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2008年07月04日(金) 13時02分

川崎市の地域再開発、深まる県と住民の溝オーマイニュース

 6月にオーマイニュースに掲載された「地域再開発、福祉か? 商業施設か?」の記事を見た南高訴訟を支える会の千葉さんから手紙を頂いた。

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 「記事と写真に感動した。ありがとうございました。とうとう7月に入って工事が着手されそうだ」と書かれており、「取材に来て欲しい」と加えられていた。そこで7月3日、再び抗議行動の現場を訪れた。

 現場に近づくと、千葉さんが笑顔で迎えてくれた。「何か変わったことがあるんですか」と聞くと、千葉さんは「これを見てください」と言う。

 6月30日の午後6時半ごろ、現場に誰もいなくなったのを見計らって、誰かが「掲示物を速やかに撤去するように」という警告書を張って急いで帰ったのだそうだ。

 校門入り口の県が設置したフェンスに川崎南高を活かそう会、訴訟を支える会が経過報告やメッセージ、アピールを多数掲げている。これらの掲示物によって、活かそう会の趣旨が次第に地域住民に理解されるようになり、今では冷たい物を持って激励に訪れてくれる住民が増えてきた。

 しかし、県はこれが怖いのだ。すぐに撤去しろと言う。おまけに漢字にルビ(読み方)が付けてある。千葉さんは「バカにするな」と怒る。

 さらに「あっちを見てください」と指さす方を見た。工事現場の囲い塀が設置され、校門の付近に工事車両出入り用口にもうけられた開閉カーテンが開かれたままになっていた。「いつでも工事を再開するぞ」という県の意思表示が伝わって来ると言う。

 住民側は、「川崎市は県に解体を要望したことはない」という情報を掲示するとともに、早朝、深夜に変な動きがあった場合の110番を決め、住民に警戒するようメッセージを送った。ほっておけば溝が深まるばかりの様相である。

 この問題に注目する国会議員もいるようだ。千葉さんが「国会議員の河村さんを知っていますか」と聞く。「民主党の河村たけしさんですか」と言うと、「そうです。先日ここに来てくれました。私たちと一緒に座りこみし、いろいろ話し合いました」と言う。河村氏は松沢県知事に「どうなっちょるんじゃ、話を聞かせてくれ」と携帯電話したそうで、近々両氏は会うそうだ。

 「為政者が現地に来て、いろいろ話を聞いてくれることは良いことですが、そんな為政者がいない」と千葉さんは嘆く。

 この両者の硬直状態も、工事を妨害したとして県が住民を訴えた裁判で、県は裁判所から、「どうして解体しなければならないのか」の理由を明確にするよう要請されている。期限である7月28日に裁判所がどう判断するか。それによって、どっちにか動くだろうと見られている。

 「解体せず、住民のために解放すべきである」とする住民側の要求か、URと結託して商業施設を造った方が良いのか。一度、松沢県知事は現地に来て住民と話し合った方が良いのではないか。

 話し合いを避ければ避けるほど両者の溝は深まるばかりで、最後は県の強行突破で住民があきらめる構図が見え隠れする。

 帰り際、千葉さんは「私たちは月に1回皆でミーティングをやっています。オーマイニュースに掲載された記事で「役所は住民との約束をどうして守らないのか」という主張に皆、大喜びしました」と言って見送ってくれた。

(記者:矢本 真人)

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