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2008年07月03日(木) 09時16分

「消費者にはどうせわからない」 とどまるところを知らない食品偽装事件産経新聞

 またひとつ悪質な食品偽装が警察によって捜査を受けた。北海道の食肉加工販売会社「ミートホープ」による食肉偽装、秋田の比内地鶏偽装、料亭「船場吉兆」による一連の偽装…。食品表示の偽装はまったく収まる兆しがない。偽装を監視する農林水産省と警察は昨年から体勢を強化してきたが、偽装は止まるどころか、一部業界では拡大の様相すら見せ始めている。
 「国産ウナギも中国産も一般の人が食べたら、どっちがどっちか分からない。ばれなければ平気という発想を持つ人はいる。普通は、ばれるのが怖いけど」
 あるウナギ卸業者は、こう本音を打ち明けた。
 豚肉や鶏肉を混ぜたミンチ肉を「牛100%」として販売した北海道苫小牧市のミートホープ。廃鶏(はいけい)を比内地鶏製品と偽って販売していた秋田の鶏肉販売会社「比内鶏」。鹿児県産肉のみそ漬け商品などを「但馬牛」「三田牛」と偽って表示し、販売していた船場吉兆。
 「いずれの事件にも共通点がある」。ある捜査幹部は分析する。「増長した経営者が『客はどうせ分からないから』と、犯行を主導していた点だ」
 どうせ分からない−。業者にはびこる消費者軽視の意識が、偽装の連鎖を断ち切れない理由だという見方だ。こうした意識は、特定の業界だけに限られないが、ウナギ業界では特に食品偽装が頻発しており、農水省も以前から神経をとがらせていた。
 刑事事件化したのは今回の魚秀が初めてだが、昨年9月から12件の偽装が行政によって指摘されている。製造者として架空会社を記載するなど、魚秀の悪質性は際だつものの、主な手法はほとんど同じ。価格の安い中国・台湾産を、高い国産と偽装表示するという利益目的の偽装だ。
 相次ぐ偽装発覚で、消費者の意識は高まり、食品偽装への監視体制も増強はされている。
 警察庁は昨年11月から、農水省と積極的に情報交換を進め、全国の警察で食品偽装事件の摘発へ前向きな姿勢をとっている。農水省も「食品表示特別Gメン」20人を新設し、全国での広域調査体制を確立した。
 ただ、その一方で、現日本農林規格(JAS)法など現行法の限界も指摘されている。同法では、行政は業者に是正指示、命令ができるだけ。命令に違反すれば、刑事告発の対象になるが、従えば、警察が捜査に乗り出さないかぎりは、業者にはなんのペナルティーも課されない。
 そうした行政の限界が、「少々ばれても平気」という悪意を許している−という指摘もある。現在、政府・与党で「消費者庁」の設置検討が進んでいるが、農水省幹部は「この中で、食品偽装に対する規制強化も検討される」としている。

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