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2008年07月03日(木) 00時00分

(3)渋滞、景観・・・完成後の不安読売新聞

 「近隣住民には迷惑を掛けないと、はっきり言って下さい」

 先月23日、墨田区のすみだ女性センターの3階ホール。区や周辺自治会、東京スカイツリーの事業者などで作る「まちづくり連絡会」の席上、建設地近くの町内会の男性が、排ガス被害への不安を施工業者にぶつけた。本工事が始まると、毎日約200台、ピーク時で700台の車両が出入りする。施工業者側は「車を路上には待機させません」と、排ガス被害を最小限に抑えることを約束した。

 だが、車両問題が本当に深刻になるのは2012年春のタワー開業後だ。タワーに来る車は平日で約1万1100台、休日で約1万2700台と試算されている。タワーには約1100台分の駐車場が整備されるが、周辺住民は「駐車場待ちの車で周辺の道路は身動きがとれなくなる」と不安を隠さない。区は電線の地中化や歩道のバリアフリー化を進めているが、ある区幹部は「道路の拡幅は物理的に無理。渋滞解消の決定打はない」と打ち明ける。

 東武タワースカイツリー社は、観光バスを予約制にし、駐車場の空き状況やタワーのエレベーター待ち時間を携帯電話のサイトで提供するなどの方法で渋滞緩和を図ることを検討しているが、効果のほどは未知数だ。

 連絡会で声を上げた男性は「将来、この場所には住めなくなるのでは」と漏らした。

     ◎

 一方、向島など中低層の建物が多い区内には高層マンションが目立ち始めた。ピンクや黄色の派手な外壁。下町の息づかいが感じられる街並みとの調和は、ほとんど考慮されていない。

 「タワーが完成すれば、高層マンション建設はさらに増えるだろう。その前に対策を立てておく必要がある」と、区都市計画部の渡会順久部長は言う。

 区は現在、景観を損なうような建物を制限する景観条例の制定を進め、建物の高さ規制も検討している。

 先月の墨田区議会では、ある区議から「住民に電磁波の影響はないのか」との質問が出された。山崎昇区長は、環境アセスメント(影響評価)の結果を踏まえ、「安全は十分と見込まれている」と答えたが、区民の間には、電磁波の影響だけでなく、電波障害や日照権の問題を懸念する声もある。山崎区長は「事業者に対して、住民の懸念や不安解消に努めるよう引き続き指導していく」と強調した。

     ◎

 課題はまだある。まちづくり連絡会の北村真一会長(73)は「タワーの完成後、新しい住民や観光客が増えると、治安悪化が不安だ」と語る。

 区は、タワー周辺の路地に明るい街灯を付けたり、市民ボランティアを主体とした夜間パトロール隊を編成することを検討している。また、本所警察署もタワー内や地域住民の安全を確保するために敷地内の広場に交番を建てたり、外国人観光客に対応できるよう語学が堪能な人材を配置する方針だ。

 タワー建設に伴う課題は尽きない。完成まで約3年半。準備の時間は、そう多くない。

(この連載は山内健、槙野健、石井正博が担当しました)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231214843521989_02/news/20080708-OYT8T00503.htm