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2008年07月02日(水) 00時00分

<4>心配する気持ち伝える読売新聞

 ◆NPOの無料電話 1年で相談1000件
自殺防止ネットワークの電話相談。受話器を通し、悩む人と向き合う。

 「この電話を切った後、自殺します」

 昨年秋、NPO「国際ビフレンダーズ 宮崎自殺防止センター」(三山吉夫理事長、宮崎市)に電話相談してきた男性が突然、こう打ち明けた。

 「悩みを話してくれませんか。せっかく電話を下さったのだから」

 受話器を取った同センターの甲斐妙子所長が返すと、男性は人間関係の悩みを1時間ほど語った。

 その日以降、男性から「話を聞いてほしい」と数回電話があった。そして、今年1月2日、その男性と思われる声でお礼があった。

 「お陰で去年、死なずにすみました」

 同センターは自殺問題に強い関心を持つ甲斐所長の知人らが集まり、昨年4月に発足した。同6月下旬から毎週日曜日午後8時から3時間、無料電話相談を始め、同10月から水曜日も相談日に加えた。

 「自殺防止センターです。どうされましたか」

 「つらい思いをされているんですね」

 相談員はメモを取りながら、相づちを打つ。20分ほどで終わる電話もあれば、1時間以上、やりとりが続くこともある。

 これまでの相談は約1000件。男女の割合はほぼ半々で、人間関係についての内容が約3割で最も多く、経済問題、精神疾患、孤独への不安、うつ、家族問題と続く。冒頭の男性以外にも、死のうとして睡眠薬を飲んで電話してくる深刻なケースも少なくない。

 「息遣いや声音で、泣いた後とわかる。相談員は『話を聞いてくれている』と感じてもらえるよう集中します」。甲斐所長が相談を聞く心得を説明する。

 電話の悩み相談は行政機関や民間団体によるものなど県内各地にある。同センターの特徴は、相手の話を聞いた後、死のうと考えているか、自殺の準備をしているかなど、ダイレクトに聞くことだ。

 「国際ビフレンダーズ」は世界約40か国、約200か所で活動するイギリスが本拠地のNPOだ。日本では1978年に「大阪自殺防止センター」が初めて設立された。

 創設者の西原由記子さん(75)は「孤立した人は『私1人くらい死んでもいい』と考える。だから、『あなたを本当に心配している』という気持ちを伝えるのです」と自殺する人の心理を考えた対応を呼びかける。

 課題は相談員(12人)の不足だ。甲斐所長は「活動を広げるためにも、1人でもメンバーを増やしたい」と訴える。

 6月22日、宮崎市で開かれた4期目の相談員養成講習会。参加した会社員や大学生ら12人に、西原さんは諭すように語りかけた。

 「『自殺防止センター』という名称に抵抗感を持つ人もいるでしょう。だけど、直接訴えてこそ、悩む人は打ち明けやすい。『自殺』について正面から考えないと(年間の自殺者が3万人を超える)日本の現状は変わりません」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/news/20080807-OYT8T00526.htm