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2008年07月02日(水) 12時16分

<エビ養殖詐欺>資金大半は不明 会長、巧みな話術で集金毎日新聞

 「エビ養殖事業に投資すれば1年で元金が2倍になる」。フィリピンでのエビ養殖事業に絡む出資金詐取事件で、ワールドオーシャンファーム会長の黒岩勇容疑者(59)らは巧みなセールストークで、約4万人から約650億円の巨額の資金を集めていた。だが、投資金はごく一部で養殖事業は架空で、残る資金の大半の行方は分からないままだ。被害者は「投資金の行方を捜査で明らかにし、早期に被害を救済してほしい」と訴える。

 「皆さんに約束したお金は、間違いなく全額支払います」。都内の高級ホテルで昨年1月にあった新年会。黒岩容疑者は1200人の会員を前にこう宣言した。出席した千葉県の男性会社員(59)も、その言葉を信じて疑わなかったという。

 男性が投資を始めたのは06年夏。20年来の知人女性からの紹介だった。当初は資金をつぎ込むたびに約束通りの配当金が口座に振り込まれた。幹部は「貴重な情報だから一番大切な人を紹介してほしい」と、新たな投資家を探すよう求めてきた。男性は家族や親族、取引先など9人を勧誘し、190万円の紹介手数料を受け取った。「面白くてゲームをやっているような感覚だった」と振り返る。

 しかし、昨年1月以降、配当の支払いが停止した。同5月には「台風でエビの養殖場がダメージを受けた」と通知が届いた。不安になり、同7月当時台東区にあった本社を訪ねたが、担当者は不在で残務整理が始まっていた。投資額は家族分を含め約2600万円。自宅ローンの支払いができなくなり、知人らには「信用していたのに」と責められた。当時住んでいた神奈川県内の築7年の自宅を売りに出し、千葉県に転居した。

 男性は「自分も反省する点は多いが、うその話で大切な人間関係を壊したことは許せない。きちんと捜査して2度と同じような被害が出ないようにしてほしい」と訴える。【武内亮、町田徳丈】

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