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2008年07月01日(火) 16時23分

若者と対峙できる映画『R246 STORY』オーマイニュース

 はるか古代より口にされてきた「最近の若者は……」という言葉。世代の壁というものは、よっぽどの努力か、あるいは柔軟性が伴わなければ超えられるものではない。結局、「最近」を知りたくなった人間は、バラエティー番組などで見られる渋谷センター街あたりの街頭インタビューなど、撮影されたものを通じてしか知り得ないことになるだろう。

 『R246 STORY』というオムニバスムービーもまた、それらを知る手がかりのような作品なのかもしれない。東京都千代田区から神奈川を通って静岡県沼津市まで続く122.47キロメートルの国道246号線(通称:ニーヨンロク)をテーマに、6人の若きアーティストが思い思いのシナリオでショートフィルムを競作したのが本作だ。

 タレントのユースケ・サンタマリアさんや、日本映画界に欠かせない俳優、浅野忠信さんのほか、ヒップホップグループ RIP SLYMEのILMARIさんや元格闘家の須藤元気さんなど、実に多彩なメンバーが本作の監督を務めているが、そのシナリオもまたバリエーション豊かなものとなっている。ニーヨンロクが舞台になっていることのみが共通項で、あとはトップバッターを務める俳優の中村獅童監督が江戸時代の人々とロックンロールをミックスしたかと思えば、その30分後には須藤元気監督がフリーターと宇宙人に……という具合である。

 その作品一つひとつに監督の思い入れがにじみ出ていて、どれも濃い内容に仕上がっている。例えば唯一のドキュメンタリー作品『DEAD NOISE』は、監督のVERBALさん自らが身を置くヒップホップ・シーンの現状について、当事者らの声によって問題点が浮き彫りにされていく様子が興味深い。また、作品の多くに大胆なエフェクトをかけた浅野監督『224466』はあまりに前衛的な実験作だが、俳優業とはまた別の、本人の「やりたいこと」がひしひしと伝わってくるが、それらを受け止めて理解するには、なかなか根気のいる作業かもしれない。そして、ラストにはユースケ監督の『弁当夫婦』という、素朴なラブストーリーが気持ちをほぐしてくれる。冒頭から映し出される永作博美さんの調理シーンが印象的だ。

 それぞれが趣を全く異なったものとした、6本の短編集。その雑多さ、統一感の無さこそがまさに「最近の若者」だと言えよう。そして、もし自分がその若者だったとして、この「ニーヨンロク」とゆかりがあったなら、7本目の作品はどんなものを撮るのか考えるのも、また一興というものに違いない。

■公開情報
『R246 STORY』
8月下旬、渋谷Q−AXシネマ、横浜ブリリア ショートショートシアターほか、全国ロードショー

(記者:鵜飼 亮次)

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