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2008年07月01日(火) 03時09分

iPhone 3Gと、増えてきたBluetoothケータイ──Bluetoothはようやく日本で普及するのか+D Mobile

 2004年に施行された改正道交法によるハンズフリーブームには間に合わず、現在も日本では欧米より普及していないとされるBluetooth製品。しかし「ようやく日本でも普及する」兆しが見えてきた。日本のBluetooth製品市場の現状と展望を、黎明期からBluetooth製品を精力的に発売する日本プラントロニクスの村田浩志社長に聞いた。

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 欧米と比べると日本はどうも──。近距離無線通信規格の1つ Bluetoothは、欧米と比べると日本では一般的に使われるほどユーザーにはまだ普及していない。

 もちろんすでに活用するユーザーも多い。おそらくそのユーザーはBluetoothの利便性を理解し、手放せなくなっている。そしてこのようなことを口にする。「ソフトバンクモバイルの端末であれば選択肢もかなり多いが、ドコモやauだとおのずと選べる機種が限られてしまうのが難点だ──」

 この状況は、2008年になってようやく改善される兆しを見せている。

 2008年発売モデルでは、そもそも採用例が多かったソフトバンクモバイル以外のキャリアの端末にも“Bluetooth対応ケータイ”が増えたためだ。ドコモはパナソニック モバイルコミュニケーションズや海外メーカーのNokia、モトローラ、BlackBerryスマートフォン端末以外にシャープ製の「SH906i」「SH906iTV」や「HT1100」などのWindows Mobile搭載スマートフォンに採用。au端末は従来の東芝製端末に加えて新プラットフォーム“KCP+”採用端末、ウィルコムもWX310K以外に「WILLCOM 03」や「WILLCOM D4」、イー・モバイルは音声サービス対応機種すべて。特にauはテレビCMなどでも盛んにBluetoothによるワイヤレス音楽再生機能をアピールし、ソフトバンクモバイル向けの「iPhone 3G」もBluetoothに対応するなど、普及のトリガーとなるよい材料がそろってきた。

 これを機に、日本でもいよいよBluetoothが広く普及してくるのか。国内市場向けにBluetoothヘッドセットなど、対応製品を精力的に投入する日本プラントロニクス代表取締役社長の村田浩志氏に、国内におけるBluetooth製品市場の現状と展望、そして同社のBluetooth製品に関する狙いを聞いた。

── Bluetooth製品の国内市場における現状を教えてください。

村田浩志氏(以下、村田氏) 3年半前くらいまで日本にはBluetooth製品がありませんでした。プラントロニクスはこの日本市場で初めてのBluetooth製品「M3000」(2004年発売)を投入しました。正直に言いますと、残念ながらあまり売れませんでした。この頃は有線で接続するイヤフォンマイク製品が主流で、携帯電話も含めて、M3000と接続するBluetooth対応機器も少なく、ヘッドセットという言葉もまだ一般的ではなかったと思います。

 (Bluetoothヘッドセットで多く使われる)ハンズフリー通話というと、クルマにおける利用とともに2004年11月に施行された改正道路交通法を思い出されると思います。この前後3カ月は“イヤフォンマイク”製品が非常に売れました。携帯+ハンズフリー通話が認知されるトリガーになったと思います。

 ただ、Bluetoothはこのブームに乗れませんでした。弊社は製品そのものは出していましたが、Bluetoothがまだほとんど認知されておらず、Bluetooth対応携帯もほとんどなかったためです。

 それがようやく、少しずつではありますが、日本にもしっかりとした市場ができつつあると感じています。ライバル社のJabraさんやモトローラさん、最近はソニー・エリクソンさんも国内市場に参入され、競争しあえるようになったこと。そして、Bluetoothを搭載する端末や製品が増えてきたのは非常に強い追い風です。

── なぜ、日本ではなかなか普及しなかったのでしょう。

村田氏 Bluetooth搭載端末のラインアップとともに、欧米と日本のライフスタイルの違いもあると思います。

 例えば私の米国の知人は、朝起きて1時間ほどクルマで通勤しますが、この1時間は黙っていない(笑)。家族や友人のほか、運転しながら仕事の話もします。もちろん行きだけでなく帰りもです。クルマという空間で会話するのが当たり前になっているようです。

 このハンズフリー通話を一度体験すると、普段もヘッドセットが手放せなくなるといいます。海外の街中でヘッドセットを利用するユーザーが日本より多いのは、必然的な状況から利用し、それが“当たり前になる機会”が多いからではないでしょうか。じつは日本でも、クルマで通勤するユーザーが多い地方都市からの問い合わせが最近、かなり増えています。

 また、通勤電車など列車内での通話は基本的にNGとされていますので仕方ないですが、それ以外の用途でケータイをかばんやポケットに入れたまま会話するのは、果たして不便でしょうか。長電話になりそうなときや仕事中など、両手があくのはやはりなにかと便利です。

── Bluetooth搭載端末が日本でもかなり増えました。“機会”もこれで増えるということでしょうか。

村田氏 携帯電話に限らず、BluetoothヘッドセットはBluetooth対応機器あってこその製品です。ただ、特に普及率や販売数が圧倒的に多い携帯電話端末への採用例が増えると、それに応じてヘッドセットやオーディオデバイスはもちろん、キーボードやマウスなどのBluetoothの周辺機器も盛り上がってくることでしょう。それらの相乗効果でさらに“機会”も増えてきます。

 また、7月11日に発売するiPhone 3Gも1つのトリガーになると期待しています。iPhone 3Gの優れたデザインとともに、ワイヤレスでスマートに通話したいと思うユーザーも増えてくれるとよいと思います。

 今回新たに、iPhone 3Gと同日に発売する「Discovery 925」は、5月に米国で先に発売しました。(米国におけるiPhoneの通信キャリアである)AT&TのキャリアショップやApple Storeでも販売していますが、Discovery 925をiPhoneと一緒に購入していくといううれしい例もかなりあると聞いています。

 北米におけるBluetooth搭載携帯電話の普及率は2008年現在でも6割弱、2011年には8割に達するほど当たり前の機能になっていると予想されます。プラントロニクス製品の日本市場出荷台数は2006年度に2万台、2007年度に4万台を出荷し、年々2万台ずつ増えています。

── このDiscovery 925は、いままでの製品と何が違うのでしょうか。

村田氏 Discovery 925は、今までつや消しブラックやシルバー基調で、どちらかというとビジネスユーザーや男性ユーザー向けだったイメージを覆すデザインとカラーリングを採用し、“Bluetoothは難しそう”と思わせてしまう要因の1つだった初期ペアリング作業が容易に行える工夫も設けました。

 デザインとともに機能性も重視しています。重量8グラムの小型軽量ボディとやさしく耳にフィットするシリコンゴムのイヤーピースが優れもので、装着しても重さをほとんど感じず、違和感もかなり少ない仕様となっています。S、M、L、3種類のサイズのイヤーピースが付属します。

 また、同時に2つの機器と接続でき、シームレスに切り替えて利用できるマルチポイント・テクノロジーや、携帯時も本体を充電できるバッテリー内蔵収納ケース、周囲のノイズレベルに適応した音質や音量に調整するとともに、相手へ送信する音声のノイズも軽減するAudioIQテクノロジーなども搭載します。

 プラントロニクスは耳かけ式の「Voyager 510」などの製品もありますが、このスタイルはメガネをかける人だと少し使いにくい面もあります。イヤーピース型のDiscovery 925であればこういうユーザーも安心して使えます。

──どのような人がターゲットになるのでしょう。

 1つはiPhone 3Gを購入されるユーザー。そして10代から20代の携帯やファッションに敏感な若者や20代から40代後半のビジネスパーソン、業務でクルマに乗る機会の多いユーザーなども想定します。

 日本市場向けモデルは当初、ブラックのみとする予定でしたが、よりエレガントなゴールドとセリーズ(ピンク)も急遽追加することにしました。ゴールドとセリーズ(ピンク)カラーモデルはブラックより少し遅く(8月発売予定)、販売チャネルも少し限定する予定ですが、Discovery 925のファッション性と使いやすさを、女性ユーザーにも訴求したいと考えています。

 新たにBluetoothケータイを購入した人は、ぜひこのワイヤレスハンズフリー通話の快適さも体験していただきたいですね。「一度使ったら手放せなくなる」ことが分かっていただけると思います。

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