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2008年06月30日(月) 17時12分

深刻化する医師不足問題〜日本の医療崩壊 第1回オーマイニュース

 桝添厚生労働大臣の私的諮問機関である「安心と希望の医療確保ビジョン」の報告書が6月18日にまとまった。最大の焦点である意思要請数の増加を盛り込むかどうかについては、大学医学部の定員削減をうたった1982年、1997年の閣議決定を覆し、「医師養成数を増加させる」と明言した。

 報告書は、医師不足などに端を発する医療崩壊の現状を深刻にとらえた内容である。

 今まで厚生労働省は、医師不足は、「医師の偏在」だと言い続けてきた。しかし、根本的な原因は医師の絶対数の不足という指摘があったが、日本医師会の強い反対で逆に医学生の定員削減政策を推し進めてきた。
与党の金蔵であった日本医師会もこのごろ力を失ってきた。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国の1000人当たりの医師数(2004年)を見ると、平均医師数は3.1人だが日本は2.0人で加盟24カ国中22位、ギリシャの4.9人が1位、続いてイタリア4.2人、フランス3.4人、ドイツ3.4人、アメリカ2.4人と続く、日本より少ない国は韓国とメキシコの2カ国のみである。日本がOECD諸国並になるにはあと12.7万人が必要である。日本の医師は現在27万人と言われているが、実働医師数はもっと少ないという。

■政府の医療政策の誤り

 以前から厚生労働省は医師が余っているとして医学部の定員削減政策を行ってきた。これは、ろくに調査もせず、日本医師会の強い要望により行われものである。当時は日本医師会の力が強く、政治資金などに頼っていた政府与党がこれを丸のみしたからだ。日本医師会の本音として、医師が増えると自分たちの収入が減ることに危機感を覚え、政府に対応を求めたというところだ。患者のことより自分たちのことしか考えていない輩(やから)が多かったのである。今は医師会の力は衰え、若い情熱を持った医師が増えたことで患者を大事にする医療が行われるようになってきた。

 ただ、日本は病院の数が多すぎる。病床数100に対する医師の数は、アメリカで約67人なのに対して、日本は14人弱。単純に計算して、日本人医師はアメリカの医師に比べ、5倍の入院患者を診なければなりません。

 当直医も必要ですし、多くの病院は夜間や休日の診療や救急外来もあり、当直医・救急医など、医師1人にかかる負担は相当なものです。来年度から医学部の定員増を行うとしているが、一人前の医者に育て上げるためには最低10年必要と言われています。この政策の遅れは医者のみならず、国民の不安を増大させるのではないだろうか。

 政府の医療政策の責任は大きいものがある。

■臨床研修必修化

 厚生労働省は2004年度から臨床研修必修化を打ち出し、医学部を卒業し、国家試験合格後、2年間の研修を義務付けました。

 これによって、今までは卒業した医学生が「医師」として研修をしていたのが、「研修医」という資格しかなく、研修医が必ずしも回るわけでもない泌尿器科・整形外科・耳鼻科などは、2年間新戦力が0の状態を余儀なくされてしまいました。

 また、研修医として各科を診るうちに、理想と現実の違いを知ることにより、忙しい科、危険な科(産婦人科・小児科等)などには新規の医師のなり手が減少することになった。人間誰でもリスクの高い業種は嫌なはず。医師とて例外ではない。

(記者:梅沢 清志)

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