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2008年06月30日(月) 11時42分

生活保護の老齢加算廃止、合憲判決に疑問オーマイニュース

 昭和30年代から続いてきた生活保護の老齢加算(生活保護受給者で70歳以上に支給していた)を、21世紀になってから打ち切り廃止にしたことが、日本国憲法が保障する生存権を侵害する事になるか否かが争われた裁判。東京地裁は、6月26日、「老齢加算の廃止には合理的な根拠があり、憲法が保障する『健康で文化的な最低限度の生活』を下回る困窮を余儀なくされたとまではいえない。憲法に反するとはいえない」として、原告の訴えを棄却した。

 私は、今回の東京地裁の判決で「合理的な根拠」という言葉が使われたことに疑問を感じる。

 昭和30年代や40年代に、自民党の大物政治家、佐藤栄作元総理は老齢加算の福祉面での必要性を演説していた。しかし、平成の町村官房長官は、生活保護の受給額が基礎年金の満額受給額を上まわっているのが問題だと簡潔に発言をした。

 かつて、自民党は、老齢加算に高齢者福祉の面から賛成していた。しかし、21世紀の自民党は、老齢加算の廃止に転じた。結局は長期の財政制度設計責任はうやむやになった。

 外国の例を調べてみると、スウェーデンは最低保証年金など、年金制度の充実で、老齢の生活保護受給者の数を正論の政策誘導で減らしている(利権や無駄も少ない)。

 英国は、ブレア政権などで、年金制度を充実させ、高齢層の人々に生活保護とは違う希望プランを与えた(日本の基礎年金の最低受給資格が2008年現在、 25年の納付。一方、英国は基礎年金の最低受給資格を11年、基礎部分の満額受給を30年に改革した)。また、英国は、年金クレジット制度というプランも考えていた。

 日本の官僚や、自民党内の年金保険料方式堅持論者は、年金がない人は、生活保護を受けろと言っているが、生活保護費用の国の補助負担割合は減っており、多数の地方自治体は悲鳴をあげている。日本は、バブル景気にわいていた20年ほど前は、国民年金の1カ月の掛け金は8000円台であった。故小渕元総理の約束した、国民年金保険料は月額1万5000円台以上にしないという約束も死後、破棄された。

 国民年金保険料の負担を大きく上げて、生活保護の給付を下げて、団塊世代が老いていく少子高齢化社会を乗り切ろうとする厚生労働省の姿勢には、疑問を感じる。

 今回の東京地裁の判決からは、裁判官の個人的な思いが伝わってこないし、外国の例も含めて熟慮した感じを受けない。

 国民に痛みを求めるにしても、官僚は「25年ルールを守れない者は、今までの年金掛け金を全部没収と言う一方、厚生労働省や防衛省で、事務次官など要職にありながら、汚職で国民生活に損害を与えた元官僚は、年金受給権を没収されてはいない。

 公務員の年金は、基礎年金部分、共済年金部分、職域年金部分と三段階になっている。職域年金部分は、給料天引きされているとはいえ、元は税金から出ており、給付時のお得度が高くなる設計になっている。

 国民の年金保険料を毎年あげて苦しめる前に、懲戒免職になった役人や、国民に大損害を与えた事務次官の職域年金部分の受給権を没収できる新法を考えるべきだ。

 スウェーデン方式で脱落者の少ない世の中にするのか、英国のように、あれこれ知恵を使うのか、まともな議論が必要だ。日本では、民主党など各野党だけでなく、自民党の麻生太郎氏からも基礎年金税方式で最低保証論が出ている。

 英国では生活保護の申請書は郵便局に置いてある。

 生活保護の人々の老齢加算をめぐる日本各地での裁判は、長年の日本の福祉政策や政権政党の考えの揺れが生み出した側面も大きい。

 日本では気持ちの問題から生活限界まで、生活保護の申請をためらっている高齢者も多い。その精神を踏みにじって無駄に支出を増やしているのは、天下り官僚の人々などだ。

(記者:谷口 滝也)

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