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2008年06月29日(日) 10時52分

占い師VS郵便局員、「話術」を勝手に比較してみたオーマイニュース

 先日、銀座に行った。場所の制限がされていて、ひと頃より減ったものの、まだまだ占い師がたくさんいた。そして、女性が長い行列を作っていた。

◆銀座の占い師の場合

 私はあまり占いに熱心ではないけれど、話の種に……と思って、男性の占い師に3000円の総合鑑定を受けてみた。この占い師のやり方はこうだった。まず、生年月日と干支を聞いてくる。次に両手の手相を見る。

 すると「今からたくさん話すから、聞き逃さないようにね」と言い、ものすごい勢いで話し始めた。

 「あなたは自由を好み、束縛を嫌うタイプ。粘着質な面がある。だけど保守的。結婚は来年から50歳までの間、48歳で金運に恵まれる……」

 とにかくものすごい勢いだった。しかし、ほとんどが「バーナム効果」を思わせる言葉ばかりだ。つまり、誰にでもあてはまる言葉を並べ、当たっていると思いこませるわけだ。そして、そう思わされた人は、最終的にその人が言うことをなんでも信じるようになる。

 ……が、私は天地がひっくり返っても「保守的」な人間ではない。大前提の「バーナム効果」で、「はぁ?」と言ってしまった。

 マシンガントークが終わった後、私が「のっけから間違ってるじゃん!」と、不服そうな顔をし、「その判定には納得できないのだが」と言うと、占い師は「あなたは人の言うことを信用しないから、幸福になれないのだ」と言った。いい逃げ上戸だ。

◆郵便局の投資信託係の場合

 さて、私は郵便局の投資信託に入っているのだが、ご多分にもれず元本割れである。銀座で占いをしてもらった翌日、損切りしてほかに投資しようと、解約に必要な道具一式を持って窓口に行ったのだが、出て来た担当者は開口一番こう言った。

 「元本が割れてるなら、買い増し時ですよ」

 それはそうだが……、おそるべき民営化。そう思っていると、彼は、なぜ私の入っている投資信託の価格が下がっているかを説明……いや、「質問」を始めた。

 「なぜ、サブプライムローンがリートに影響していると思いますか?」

 なんとなくわかるが、うまく言葉にできない。言葉に詰まっていると、彼は「本質的には関係ないものなのです。しかし、言葉のあやによって大衆心理が同じ不動産分野のリートから離れてしまったのです」と解説してきた。

 ほかの様々な要因についても、同じ語り口。まず、私が答えられないような質問をする。答えに困る。すると彼が「回答」を示す。これでは納得する以外、ない。

 それでも解約に適当な時期について聞いてみる。するとおもむろに「落語で亥年は景気がいいって話があるの知ってますか?」と聞かれた。この落語を聞いたことがない私は、なんでいきなり落語? 干支? 占いみたいな話? と困惑した。

 しかし、その理由は政治経済社会問題に根ざした根拠のある話だった(落語の内容は長くなるので割愛させていただきます)。

◆結論:郵便局の投信係の勝利

 あくまでも私的ジャッジメントだが、どう考えたって郵便局の投信係のトークの方が上である。まあ、客層が「なんでもいいから信じてすがりたい若い女性」と「資産運用を目指す人々」では、レベルが違って当たり前なのだが……。占い師の実体と、郵政民営化による営業の強化という一見関係ない事柄が、私の中では同じ「話術によるテクニック」ということで重なって思えて、驚嘆した。

 もし、銀座で「占い師」に並んでいるような女性が、この郵便局の投信係と会話をしたらどうなってしまうのだろう。全財産投資してしまうかもしれない。

(記者:神田 もつら)

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