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2008年06月29日(日) 03時12分

ベトナムでのPCI贈賄工作、現地公共施設で責任者に現金渡す読売新聞

 政府開発援助(ODA)事業に絡み、大手コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)がベトナムで行った贈賄工作の詳細が、同社関係者の話で分かった。

 資金提供の場は、ホーチミン市にある横断幹線道路プロジェクト組織(PMU)の事務所内で、2千数百万円の現金をバッグに入れてPMUの責任者に手渡していた。ベトナムにおける年間の国民総所得(1人当たり)の約300倍にあたる巨額資金が、公的機関の一室で飛び交う異常さが浮き彫りになった。

 PCIと同社を含む共同企業体は2001、03年度、ホーチミン市を東西に横断する幹線道路の建設工事のコンサルタント業務を計約31億円で受注。PCI関係者によると、PMU側とは、受注に便宜を図ってもらい、成功した場合は謝礼を支払うという約束が事前に交わされていたという。

 03年春ごろ、まずハノイ市にあるPCI現地事務所に、本社幹部から「受注の見返りに、責任者に金を渡せ」と指示があり、本社から資金が送金された。現地事務所の所長(当時)は、PCIを辞めていた元常務とともに、米ドルの現金をバッグに入れて、約1170キロ離れたベトナム南部のホーチミン市に向かった。

 2人が訪れたのは、同市内にあるPMU事務所。PMUは「ホーチミン市人民委員会」の内部組織で、総事業費約800億円の横断幹線道路建設の事業全般を取り仕切っていた。

 2人はPMU事務所の一室で責任者と面会。資金についてはPCIからではなく、あくまでも元常務から提供されたものだと説明し、バッグごと責任者に渡したという。あるPCI関係者は「金を渡す場に元常務を同席させたのは、PCIに籍がない人間から提供されたもので、PCIは無関係であることを装うためだった」と証言している。

 同様の資金提供は06年夏にも行われ、相手は同じPMUの責任者。1回の提供額は2千数百万円で、総額では数千万円になるという。06年のベトナムの国民総所得(1人当たり)は656ドル(現在の為替レートで約7万円)。PCIが渡した資金の高額さが際だっており、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)容疑で捜査している東京地検特捜部は、資金提供の経緯について解明を進めている。

 ホーチミン市は人口660万人(07年)で、ベトナム最大の商業都市。急速な経済成長と人口増加により、交通渋滞や大気汚染などの問題が深刻化しており、東西に横断する幹線道路の建設が急務とされている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080629-00000005-yom-soci