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2008年06月28日(土) 00時00分

<1>低い所得、高い離婚率読売新聞

 ◆複数の要素絡む原因
県内の自殺者数と自殺率
県が行った自殺についての調査報告書。7割が経済的な不安を抱えていた

 「自殺のサインを察知できなかった。本当の気持ちをわかっていなかった……」

 野尻町出身で、保健師として自殺防止に取り組んでいる町ほけん課職員の山下久美子さん(51)は悔やんだ。

 体調管理や人間関係、仕事選びなどについて、相談を受けてきた町内の男性が数か月前に自殺した。亡くなる数日前に電話で話した時に変わった様子はなかった。後に男性の親類から「持病のことで悩んでいた」と伝え聞いた。

 同町では、今年すでに3人が自殺している。山下さんは2006年から町民の健康診断でうつ症状をチェックしたり、悩みを聞いたりしてきた。「やはり、専門家でないと難しいのでしょうか」

 01〜05年の統計を基に、県が各市町村の自殺者数や年齢、人口から割り出した「自殺比率」は宮崎市や高鍋町など一部を除き、ほとんど全国平均を上回った。野尻町を含む西諸県地域は、全国を100とすると、いずれも150以上。250を超える町村もあった。

 「温暖な気候」「のんびりした土地柄」「おおらかな気質」といったイメージが強い宮崎。なのに、なぜ自殺が多いのか。

 県は05年度、西諸県地域の成人6000人を対象に「心の健康アンケート」を実施(有効回答は2542人)。その結果、8割の人が仕事のストレスを感じ、7割が家族にイライラすることがあり、経済的不安を抱えていた。

 県内の自殺対策にかかわる宮崎大医学部の石田康教授(精神医学)は「理由は多岐にわたる」と説く。

 04〜06年の統計で、宮崎県は▽所得(1人当たり約221万円で全国44位)▽完全失業率(6・1%で同16位)▽個人自己破産(10万人当たり238・5件で同7位)▽離婚率(1000人当たり2・34人で同4位)——など、悩みや不安に結びつくと思われる要素が全国上位だ。

 石田教授はこうした数値に着目。「高い離婚率や低い所得に加え、自殺への抵抗感の薄さや悩みを話さない県民気質があるのではないか」と推察する。

 「県内で1日に1人、西諸県地域で1週間に1人が自殺で亡くなっている」。今月6日、宮崎市内で開かれた県自殺対策推進協議会の初会合で、県障害福祉課の村岡精二課長は、宮崎の危機的状況を訴えた。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/news/20080807-OYT8T00520.htm