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2008年06月27日(金) 07時50分

複雑化する消費者トラブル…長野県が「消費生活条例」産経新聞

 都道府県の中で唯一、消費者保護の条例を定めていなかった長野県が、悪質な商取引の被害防止を図る「消費生活条例」案をまとめ、来年1月の施行を目指して県議会に提出した。最も後発の条例になるものの、他県や国の法改正を参考に先駆的な内容も盛り込んだ。「不当な取引行為」の事例は50項目を超え、そこには複雑化する消費者をめぐるトラブルの姿が浮かぶ。(比嘉一隆)

 「最近、高齢者など社会的弱者を狙い打ちした悪質な手口が非常に巧妙化し、被害が後を絶たない。早急に対応する必要がでてきた」。24日の6月定例県議会の一般質問の初日。企画部の望月孝光部長は、制定の理由をこう述べた。県はこれまで、内規に相当する要項で対応してきたが、多様なトラブルの解決には、消費者と事業者、関係機関で共有する透明性のある“バイブル”作りが避けられなくなった。

 県が条例の規則で示した「不当な取引行為」の類型は52項目に及ぶ。他県と比べても多いほうで、山梨県(47項目)、新潟県(27項目)を上回る。市町村の相談業務の現場で使いやすいように具体例を増やした。

 「結婚相手紹介サービス契約で月1回のお見合い紹介が守られないので、解約を申し出たが事業者が応じない」。こうしたトラブルは、《継続的供給契約の中途解約の不当な拒否》にあたり条例に抵触する禁止行為だ。このほか、「エステの体験後、『帰りたい』と言ったのに、バスローブを着せたまま化粧品購入をしつこく勧める」ことは《勧誘場所から退去させない行為》。「年金収入しかない高齢者に高価な着物を分割払いで契約を勧める」ような行為は《知識、経験、財産、年齢などに見合わない契約》にあたる。

 条例は、不実告知(虚偽の説明)の疑いがある事業者に対して、説明が真実であることの立証責任を課す。東日本では東京都と茨城、群馬だけが採用する「みなし規定」を盛り込み、説明の合理的根拠を示す資料の提出がなければ、県は不当取引と認定する。

 例えば、「短い印鑑を使うと短命になる」などと心理的不安につけ込む商法が疑われるケースでは、寿命に影響する根拠が求められ、できなければ、是正勧告の対象になりうる。

 製品欠陥などで事故を起こす恐れがあるとして、消費生活用製品安全法などに基づき、国が商品を公表した場合、県も県民に情報提供する努力義務を定めた。「情報を流すかどうかを判断する県の裁量の余地をなくし、すぐに国の発表を県内に行き届かせる」(生活文化課)のが目的。明文化は全国初だ。

 ただ、悪質な商行為は「情報格差につけ込んでいる」(高島陽子県議)との声があるように、啓発活動が被害防止の要。狙われやすい高齢者らにいかに情報を伝達するかが課題だ。

 県消費者団体連絡協議会の小松由人事務局長の話 「条例を作るだけでなく、悪質業者への指導などの実績を作っていくことが被害拡大の抑止につながる」


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【不当な取引行為の事例(一部抜粋)】


◇勧誘行為・契約締結時に禁止される行為(24項目)

「高齢者向けマンションで、医師が24時間常駐と説明していたので契約したら、実際は近隣の診療所と提携しているだけ」(優良・有利の誤認を招く勧誘)

「投資勧誘をしないように断ったが、翌日、来訪し再度勧誘した」(勧誘拒絶後の再勧誘)

◇契約内容そのものに関して禁止される行為(11項目)

「一貫学習が効果的と説明し小学校6年間分の補習教材を契約させる」(不当な過量販売・長期契約)

「レンタルビデオ店の会員証紛失を届け出たにもかかわらず、『会員期間中の債務不履行は会員の責に帰す』との契約条項を理由に、第三者の延滞料を請求された」(カード等の不正使用の責任を消費者に負わせる定め)

◇契約履行時に禁止される行為(7項目)

「介護サービスを受けている消費者に経営が悪化したため、撤退すると一方的に告げ、サービスを打ち切る」(契約の一方的な変更)

◇契約を解約する際の禁止行為(6項目)

「電話勧誘販売で契約した資格講座のクーリング・オフを消費者が申し出たが、解約手数料、返品費用を求める」(不当な手数料要求)

◇与信契約などにかかる禁止される行為(4項目)

「収入の見通しのない学生に高額なクレジット契約をさせる」(返済不能に陥ることが明らかな者との与信契約)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080627-00000033-san-l20