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2008年06月26日(木) 15時34分

高い授業料を払えば英語は身につくのか?オーマイニュース

 岐阜県で成人講座を行った。講座の受講者はわずか14名であるが、相手が大人ということでかなり緊張した。なかには私より年上と思われる人もいて、いっそう緊張した。しかし、そのような不安な気持ちは始まるまでの数分間。ひとたび口を開いたら自然に言葉が口をついて出た。昔取ったきねづかというのはこういうことを言うのだろうか、自分でも恐ろしいほどぺらぺらとよくしゃべれた。

 もっとも内容は極めてやさしく、「初級者向けの英会話のコツ」というものだが、聞き手はみな大人で、しかもわざわざ往復はがきで申し込んだうえ、日中、私の講座に来てくれているのだ。単位のためにお義理で出席している大学の学生とはわけがちがう。

 成人向けの講座を始めようと思ったときから、私はかなり集中して内容とやり方を考えた。1回きりの単発なので、「続きはまた来週」というわけにはいかない。しかも受講者とは初顔合わせで、多分その後会うこともないかもしれない。そのような相手にほんの少しでも「この講座を受けてよかった」と思ってもらうにはどうすればよいか……。

 私は国内最大と言われた英会話学校「NOVA」が倒産するずっと以前から、外国人講師を売り物にするその手の学校に大いに疑問を抱いていた。日本人の弱みにつけこんで荒稼ぎをしている実態が「NOVA」の倒産で一部明るみに出たが、類似の英会話学校はほかにもあるかもしれないし、聞き流すだけで英語が話せるようになるという魔法のようなテープ類も販売されている。

 私が情けないと思うのは、語学力をつけたいと思う日本人の弱みにつけこんで、巧みな宣伝文句で広告を重ねる業者が後を絶たないこと。そしてそれにだまされて大金を注(そそ)ぎ込む人が後を絶たないことだ。語学力は、物品とちがって、高いお金を払ったから効果が出るというものではない。お金で頭の中の容量を増やすことはできないし、まして、相手と会話する能力を買うことはできない。

 しかし、なぜか世の中には「高価な金額=価値が高い」という図式を持っている人が多いらしく、英語を話す力も高い授業料を払えば必ず身につくと信じられているようだ。その典型が「NOVA」のような英会話学校であり、高価なCDセットである。私は学生にはそのことを言い続けて来たが、これからは一般社会人にそれを言いたい。だまされないでほしい。今回の初講座ではこのことを第一の目標にして、内容とやり方を設定した。

 講座のタイトルは「自宅でできるカンタン英会話」とした。つまり、会話学校に行かなくてもよい、高価な CDセットを買わなくてもよい、自宅で自分ひとりで英会話は上達する、そのコツを会得してもらいたいというわけだ。その一心で90分の授業内容を考え、パワーポイントと配付資料を準備した。

 そもそもこの講座は、岐阜市の生涯学習センターという部署が団塊世代の退職者を対象に開いた「市民講師養成講座」修了者の中の有志が自主的に開講したもの。受講料無料(もちろん講師謝礼も無料)で市民の自主性を重んじたボランティア活動の一環だ。私は団塊世代をはるかに超えているが一応仲間に入れてもらってこの講座を持つことができた。

 そのため受講者の募集や会場の準備など、すべて岐阜市の同センターがしてくださった。場所も同センターのあるJR岐阜駅と連続したビル内で、大変便利だった。講座当日は担当者が朝から会場準備、パワーポイントの設置、受付など、全部やってくださって本当にありがたかった。

 こうして私の岐阜市での英語講師初デビューは無事終わったが、さて、受講者の反応はどうであったか? 今、担当者がアンケートの集計をしているので、いずれ何らかの知らせがいただけると思う。ちょっとこわいような楽しみなような、複雑な今の気持ちである。

(記者:堀 素子)

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