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2008年06月26日(木) 00時00分

掲示板でイメージ具現化読売新聞

加藤主税さん 61
加藤主税さん 61 椙山女学園大学教授(言語学)。若者の生態に詳しく、携帯が身近にないとイライラする状態を「ケーチュー(携帯中毒)」と名付けた。

 ——加藤智大(ともひろ)容疑者(25)が携帯サイトの掲示板に書き込んだ内容が注目されている

 誰かに読んでほしいという気持ちもあると思うが、基本的には自分に言い聞かせ、行動を起こす手段だったと思う。言葉にすることでイメージは具現化する。もし掲示板がなければ、社会に対する漠然とした不満を抱え続けるだけで、行動には移せなかったかもしれない。

 ——「不細工」「彼女ができない」などと自虐的な書き込みが目立つ

 恵まれない状況を他人のせいにしているだけだろう。「不細工」と繰り返すことで、「私を産んだ親が悪い」と責任転嫁している。「書き込みを見て犯行を止めてほしかった」とも供述しているようだが、裏を返せば「止められなかった社会が悪い」と主張しているように思う。

 ——1日200回以上書き込むこともあったようだ

 身近な出来事を実況中継するかのように書き込みを繰り返す、いわゆるリアルタイムブロガーだ。メールのやりとりには相手が必要だが、掲示板なら友人がいなくても書き込める。10〜20の掲示板に登録し、誰かに嫌な書き込みをされるとすぐ別の掲示板に移る人も多い。そこにあるのは「いつでもリセットできる人間関係」だ。

 ——事件後もネットで犯行予告をして逮捕される若者が後を絶たない

 グリコ・森永事件など過去の事件の後など、類似の犯行予告が出されることはあったが、手紙などの投函(とうかん)先は警察や一部マスコミなどに限定されていた。ネットなら、自分の書いたことをそのまま見てもらえるので、ネット仲間の反応を楽しもうと気軽に予告してしまうのではないか。数多い書き込みの中で、自分だけが特定されるとは思っていないのかもしれない。

 事件や社会問題には様々な〈顔〉があります。新企画「アングル」では、各方面の識者に多角的な視点から分析してもらい、読者の方々に考えるヒントを提供できれば、と考えています。第一弾は、東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件。逮捕された加藤智大容疑者(25)の心理や事件の背景を読み解いてもらいます。

http://www.yomiuri.co.jp/national/angle/na_an20080626.htm