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2008年06月25日(水) 22時44分

漁船休漁で魚介類も値上げ? 消費者に不安広がる産経新聞

 燃料価格の高騰に伴う窮状を訴えようと、全国漁業協同組合連合会(全漁連)などが発表した一斉休漁。「漁業の置かれる厳しい状況を知ってほしい」という漁業関係者の声がある半面、国内ほとんどの漁船が休漁し、輸入を除くあらゆる魚介類の水揚げがストップするという事態に、取り扱い業者や消費者には不安も広がっている。

 一斉休漁を決めた背景には、漁業関係者が置かれる厳しい経営環境がある。大阪府漁連は、全国で決めた一斉休漁日の7月15日だけでなく、翌16日も独自に休漁することを決定。府漁連幹部は「農業と違って漁業には国の保護はない。燃料高騰で漁業に見切りを付ける若者もいる。国にはわれわれの声を知ってもらいたい」と話した。府漁協青壮年漁業者連絡協議会会長の音揃(おんぞろ)政啓さん(48)も「燃料代の高騰で最初から採算がとれないときもある。漁師をやめろというのか…」と嘆いていた。

 スルメイカ漁の盛期に入っている福井県の越前町漁協ではイカ釣り漁船70隻のうち15隻が燃料高騰のため操業できない状態に陥っている。同漁協の斉藤洋一組合長は「燃料代は上がってもスルメイカの値段は昭和40年代のまま。国に緊急措置をお願いしたい」と話していた。

 沖合底引き網漁が全水揚げの9割を占める鳥取県漁協網代港支所では、漁場を沖合から沿岸寄りに移したり、航行速度を落とす省エネ漁に苦心。同支所の浜納英治さん(48)は「漁協の漁師は高齢者が大半を占め、みな海でしか働けない。もう転業するには高齢すぎる」と肩を落とした。

 一方、一斉休漁や燃料高騰によって操業を停止する漁業関係が増えていることに、生鮮魚介類を取り扱う業者の間には、不安の声も出始めている。

 すし店や居酒屋など全国100店舗を展開する「がんこフードサービス」(本社・大阪市淀川区)では、休漁でタチウオやアジなどに影響が出る可能性があると想定。販売促進部の赤松隆誠次長は「すぐに価格の値上げということにはならないとは思うが、対策が必要になるかもしれない。今は状況を見守りたい」。

 また、大阪・キタの阪神百貨店では鮮魚売り場の担当者が「漁港と直接タイアップして魚を確保しているが、多少の影響は避けられないだろう」と不安げな表情で語った。

 国内外の産地を含め1日あたり平均約290トンの生鮮水産物を取り扱っている大阪市中央卸売市場によると、仮に国内分の取り扱いが無くなったとしても、輸入物や冷凍物などで対応できるため、突然、小売店から魚が無くなる事態は避けられるとみているというが、担当者は「これほど大規模な休漁は聞いたことがない」と驚いていた。

 一般消費者にも危機感が広がっている。同府東大阪市吉田下島の「イトーヨーカドー東大阪店」で、買い物をしていた主婦、巽希伊子さん(64)は「ガソリンが高くなって、ドライブにも行けなくなった。このうえ、魚にまで影響が出るなんて」と残念そうな表情。同市岩田町の主婦、平井久子さん(61)も「食卓を預かる主婦としては大変深刻なこと」と話していた。

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