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2008年06月24日(火) 18時46分

治療ミルク6倍に高騰…患者反発で厚労省見直しスポーツ報知

 生まれつき特定のアミノ酸を分解できない「メープルシロップ尿症」患者に欠かせない治療用粉ミルクの値段が、4月の薬価改定で6・5倍にまで高騰し、患者の抗議を受けて厚生労働省が上げ幅を大きく下げる異例の事態となっている。

 メープルシロップ尿症は、乳児50万人に1人がかかると言われ、国内に約70人の患者がいるとされる。分解できないアミノ酸が体内に蓄積してけいれんなどを起こし、最悪の場合は生命の危険にまで及ぶ。専用に処方した粉ミルクを中心とした食事療法を一生続けなければならない。

 粉ミルクは、国内で大手メーカーが唯一製造販売。メーカーは、少ない患者に供給するコストがかさんで採算割れに陥り、値上げを申請。1缶(1200グラム)当たり9600円が、4月から一気に6万2160円へと跳ね上がった。

 同時に、乳児8万人に1人がかかる「フェニルケトン尿症」の治療用粉ミルクも、約1万1000円から約1万7600円へと1・6倍になった。

 5月に入り値上げを知った患者らは一斉に抗議。メーカーが「値段を見直したい」と厚労省に申し出て、一缶当たり、いずれも1万3320円に引き下げられた。

 厚労省は当初、製造中止を避けるため値上げを認めたが、患者の負担を気にかけず、説明も不十分なお粗末さをさらけ出し、「配慮に欠けていた」と反省。患者らは「2年ごとの薬価改定で値段が上がり続けそうで怖い」と、まだ不安を募らせている。

 こうした値下げでも患者の負担増は避けられず、医療費が多額なら一定額以上を払い戻す高額療養費制度を使っても、費用が年間で7万円増える人もいるという。

 患者らは「成人になっても引き続き公的補助を受けられるような仕組みが欲しい」と、切に訴えている。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080624-OHT1T00195.htm