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2008年06月24日(火) 16時10分

NOVA元社長逮捕へ 謎の「潜伏」8カ月 謝罪ないまま東京転々産経新聞

 昨年10月の電撃的なクーデター劇による失脚から、約8カ月も雲隠れしていた元「カリスマ社長」。破(は)綻(たん)した英会話学校大手「NOVA」の猿橋望(さはし・のぞむ)元社長(56)は24日午前、取り調べを受けるため、大阪府警本部に入った。破綻により、30万人もの受講生が被害を受け、従業員は職を失った。それでも公の場で謝罪することは一度もなかった。東京周辺を拠点に残務整理していたとも伝えられたが、その動向はほとんど謎に包まれていた。

 猿橋元社長は、昨年6月に経済産業省から業務停止命令を受けて記者会見に臨んで以来、マスコミを避けるようになった。NOVA統括本部のある大阪にはほとんど寄りつかず、東京近辺で資金調達に奔走。東京本部には時折姿を見せ、「いま(資金調達を)頑張ってるから。大丈夫だから」と社員らを督励した。

 昨年10月25日夜、取締役3人によるクーデターで代表取締役を解任されると、「潜伏」の度合いをいっそう深めた。東京周辺を拠点に、オーナー会社の事後処理などを淡々と進めていたという。

 NOVAの事業譲渡先となったジー・コミュニケーショングループ(名古屋市)では、外国人講師の雇用問題などさまざまなトラブルが浮上。これを聞いた猿橋元社長は「(ジー社に)できるはずがない。受講生はすぐに戻ってこないだろう」と、ジー社の経営手腕をあげつらった。

 テレビ電話を使った「お茶の間留学」の拠点が、もともとあった大阪のミナミから、キタに移転されたこともかんに障った。「機械はただつなげばいいもんじゃない。バグ(不具合)が多くて仕方ないんじゃないか」。批判の言葉の裏で、自ら苦心して作り上げたシステムが、ジー社の手に渡ったことを惜しんだ。

 昨年11月には東京都内のホテルで一部雑誌のインタビューに答えたが、さまざまな疑惑に対する言い訳に時間を割き、カメラ撮影は拒否。元受講生や元従業員らへの謝罪の言葉はわずかだった。記者会見を開いて潔く頭を下げることは一度もなかった。

 代理人の弁護士に対しても、言い訳を漏らした。「生徒に対する問題、社員に対する問題、いろいろあるけれども、自分から連絡すると相手に迷惑をかけてしまう」

 府警は今春以降、猿橋元社長の側近への事情聴取を本格化。今回の業務上横領容疑が具体的に浮上すると、自身への事情聴取も「時間の問題では」と危機感を募らせた。

 「それが業務上横領といわれれば仕方ない。自首しましょう」。猿橋元社長は一時期、府警に出頭する計画を持っていたという。しかし、捜査が目前に迫るまで実行されることはなかった。

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【用語解説】NOVA

 猿橋望元社長が昭和56年に大阪で創業。「駅前留学」などを売り物に英会話学校最大手に成長した。受講料返還トラブルや経済産業省の一部業務停止命令などで資金繰りに窮し、昨年10月、取締役らが当時の猿橋社長を解任。会社更生法の適用を申請して名古屋市のジー・コミュニケーショングループに事業譲渡した。ジー社はNOVAの名称を引き継ぎ、教室を再開している。

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