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2008年06月24日(火) 12時56分

岡田スタイル、いまだ見えずオーマイニュース

 ここに来ると、いつも2002年のW杯を思い出す。

 満員の観客の醸し出す独特の雰囲気の中、専用球技場ならではの近い距離で見られるプレイに酔ってしまい、冷静に試合が見れなくなるのだ。

 レッズ戦でもそうなのに、国際試合、ましてW杯に直結した予選となればなおさらだ。だが22日、「お花見試合」にもかかわらず埼玉スタジアムに詰め掛けた51,180人のファンは、間違いなく日本の勝利に酔ったに違いない。

 たとえラッキーなゴールであろうと、それが終了間際であろうと、1点は1点、勝利は勝利だ。もっとも、喜んでばかりもいられない。わが代表、課題はまだまだ山積しているのだから……

  「岡ちゃん」こと岡田武史監督は、この日の相手・バーレーンにアウェイで敗れた後、「これからは俺の好きなようにやる」と宣言した。オシム時代の基盤を受け継いで、それに自分の色を加えようとする試みはまだまだ途上だと思うのだが、それではやりにくかったのだろう。

 では、それに代わるものは何か? 岡ちゃんはラグビーの大西戦術に端を発する「接近・展開・連続」を打ち出したが、この日の試合を見る限り、そのイメージは明らかになったとはいえない。

 相変わらず速いパスをつなぎ、スピーディに展開する、それは結構だ。雨、20.3℃というコンディションも、そうしたサッカーにはふさわしい。運動量も落ちなかった。

 ところが、速くてきれいなだけでは、相手の強固な守備は突破できない。とりわけメンバーを落とし、敵地で引き分けを狙うバーレーンのように引いて守る相手には、いくら速くても、それだけでは人数をかけて守る守備を崩すのは困難なのだ。

 オシム時代にあれだけ見られた「追い越す動き」も見られない。最盛期のヴェルディのように細かいパスをつないで、あえて狭いスペースを突破していければいいはずで、岡ちゃんも一時期はそれを目指したはずなのだが、それもなかった。

 本当はこんなときにこそ「接近・展開」が有効なのだ。サイドを突き、相手をおびきよせて逆に、もしくは中央に振る。あるいはまさにラグビーで言うブラインドを突き、スピードで突破する。そして最後はキラーパスが決まれば最高なのだが……

 結局支配率64:36、シュート数13−7と攻めに攻めながら、決まったのは内田篤人のラッキー・ゴールのみ。佐藤寿人を山瀬功治に替えて玉田圭司の1 トップを試したり、本田圭佑を巻誠一郎に替えて再び2トップにしたりといろいろと試みたものの、ファインゴールはついに奪えなかった。

 岡ちゃんの目指すものはいったい何なのか?

 唐突なようだが、記者はその2日前に国立で行われた早慶定期戦で、彼の母校・早稲田が見せたサッカーに1つのヒントがあるのではないかと思う。今年、今井敏明新監督を迎えた早稲田はこの日、すばやくサイドにパスをつなぎ、徹底的にサイドを抉るサッカーで、宿敵慶應から4点を奪って4−2と逆転勝ちした。

 もちろんサイドだけではなく、必要に応じて逆に展開したりスルーパスを出したりと、なかなか有機的な攻撃を見せていた。もとより大学サッカーと代表戦では比較にならず、今井監督が「接近・展開・連続」を意識したわけでもなかろうが、日本にふさわしい1つのスタイルであることは間違いない。

 いずれにせよ、岡ちゃんなりの「岡田スタイル」を早期に確立して欲しいと思う。監督の明確なヴィジョンが実現されれば奇跡的な勝利も生まれるということは、つい先日も、ロシアのヒディング監督が証明してくれたばかりなのだから。

 ファンは勝利に酔っていてもいいが、代表監督にそれは許されないのである。まして、こんな勝ち方では。

(記者:生田正博)

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