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2008年06月24日(火) 00時00分

地デジ課題山積…周知、受信体制の整備読売新聞


地上デジタル放送完全移行まであと3年あまり。国民への周知など課題は山積している(東京・秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaで)

 地上波テレビ放送の完全デジタル化対策が動き始めた。情報通信審議会の部会が23日承認した答申案は、国や放送局、機器メーカーなどの取り組みに加え、国民の理解・協力を得ることの重要性を強調する内容となった。

 しかし、国民への周知や受信体制の整備は立ち遅れており、地デジ対応への仕上げとなる今後3年間の課題は山積している。(加藤弘之、白櫨正一)

アナログ放送終了、意外と知られず

 アナログ放送の終了まであと3年となったにもかかわらず、消費者には意外に知られていない。総務省調査では、3月時点でアナログ放送の終了時期を知っていた人は64・7%、1年前より4・3ポイント上昇しただけだ。日本民間放送連盟が3月に実施した調査では、地デジ対応受信機(テレビ、パソコン)を持つ世帯は43・3%だったが、このうち約2割が「アンテナが未対応」などの理由でデジタル放送を視聴できていなかった。総務省幹部は「あと3年しかない。国民一人一人にもっと危機感をもってもらわなければ大変なことになる」と危機感を強める。

 このため、答申案が重視したのは、周知徹底を図る方策だ。具体的には、「テレビ受信者支援センター(仮称)」を全都道府県に設置、「相談を待つだけでなく、相談を受けるために積極的に出かける」必要があると強調した。

電波障害解消へ共同アンテナ

 地デジ普及には共同アンテナの問題も出てくる。現在、共同アンテナを利用しているマンションなどは52万施設、770万世帯ある。戸建て住宅でも近隣の高層ビルなどによって電波障害が発生するために共同アンテナを使っているのは5万施設、650万世帯に及ぶ。

 デジタル化で電波障害は圧倒的に少なくなると見られる。しかし、同じ共同アンテナを使っている地域内で、電波障害が解消されない世帯が出てくる可能性もある。そうした世帯は引き続き共同アンテナが必要となり、費用負担を巡って調整が混乱しかねない。答申案は、総務省が年度内に全国調査を行って最新状況を反映する「台帳(管理簿)」を作り、関係者にアンテナ工事などの早期の対応を呼びかけるべきと訴えている。

生活保護世帯にチューナー無償支給

 焦点となっていた専用受信機の購入問題では、自己負担を原則としつつ、経済的な理由で購入が難しい生活保護世帯には簡易型チューナーの無償支給やアンテナの無償改修を打ち出した。

 必要な災害情報などが得られなくなる事態を防ぐためだ。ただ、情通審のこれまでの議論では「最低生活費ぎりぎりの収入で生活保護を受けていない人との差が気になる」との意見も出されており、支給基準の妥当性に疑問も示された。

アナログは3年後終了

 地上アナログ放送の番組は2011年7月1日〜24日に終了する。それ以降は、アンテナをデジタル用に改修した上で、専用チューナーを設置するかデジタル対応テレビを購入するかしなければ、テレビを視聴できなくなる。

 ある家電量販店の担当者によると、新たにアンテナを設置するには工事費を含めて約3万円、対応テレビの売れ筋は42インチで25万〜30万円という。

 専用チューナーは約2万円だが、総務省は電器メーカーに対し、5000円程度の機種を開発するよう要請している。

 ケーブルテレビで地上波を視聴している場合、セットトップボックスと呼ばれる専用の受信装置を使っていればそのまま視聴できるが、そうでなければ専用チューナーが必要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080624nt04.htm