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2008年06月23日(月) 12時09分

奈良時代の高僧ゆかりの隠れ家に咲く紫陽花オーマイニュース

 香川県で紫陽花の名所と尋ねたら、誰もが開口一番、挙げるのは県西部に位置する観音寺市の粟井神社でしょう。新しい名所作りとして1984年頃に約 500株植えたのが始まりとされ、以来、毎年約100株ずつ植えつけ、今年は約3000株もの植えられたそうです。かつては刈田大明神、今やアジサイ神社として知られている名所になっています。

 しかし、実は粟井神社のほかにもう1ヶ所、県内に紫陽花の名所があるのです。ただ、仮に初めて訪れたとしたら、誰もが「本当にあるのか?」「嘘をついているのではないのか?」と言いかねないだろうという場所にあります。その地元に住む母の同級生や記者自身の知人から「『隠れ家』的なスポットですよ」と初めて言われた時も、花の大好きな記者はその言葉に興味を示し、教えていただいた通りに道を走って初めて訪れました。しかし、最初はだまされたと思ったものです。

 香川県東部に位置する、さぬき市内のいわゆる山の手地域と呼ばれる南部の旧3町のうちの長尾地域──。やって来たのは老人福祉センターやケアハウス、それに市の地域福祉センター(行基苑)などがあり、市の福祉ゾーンとして整備されている所です。一体、どこに紫陽花があるのか。疑い深い記者が行基苑の職員に尋ねたところ、「建物の裏にありますよ」と言われ、案内されると鮮やかな紫陽花が数種類、無数に植えられて、目の保養になったのが3年前のちょうど今頃のこと。あれから歳月が流れ、先日、その時以来に行基苑へ訪れました。

 行基苑は1992年に旧長尾町の施設として開設、同時にあじさい園が裏側に整備されました。行基の名前が付けられたのは、奈良時代の僧である行基が福祉施設のある区画に古代版のサウナである、からふろを作ったとされることからです。施設の上には川上と稲荷山の各古墳群があり、阪神・淡路大震災で注目された長尾断層も東にあるという小高い丘に立地しています。

 訪れたのは昼下がりからちょうど夕方が差しかかろうとしていた時間帯で、天気も雨空から雲はあったものの晴れへと向かっていました。

 あじさい園には、街中で見かける、はがきの絵にもなるような形のをはじめとして、山あじさいなど、その数は30種類、800株ほどあるとのこと。ちょうど、スプリンクラーによって断続的に散水しているところでした。その水の噴射とともに花びらから水のしずくが滴り、一層輝きを増した活き活きとした様子でした。

 しかも、白、紫、ピンクでも濃淡のある色だけでなく、種類も本当に紫陽花なのと疑いたくなるような形もあります。いろいろな紫陽花の花を眺めることができ、カラフルな色が園内を彩っていました。

 また、1200年の歴史を持つと言われるからふろも現在は財政難で休業していますが、最近、何度も利用した地域の有志によって設備を施し、再開する動きがあるそうです。

 行基苑や地域の方々からは「ここは近所の方、通所者とその家族くらいしか知りません。知っているとしたら、よほどの通ですね。それでも、マスコミやメディアで取り上げたこともあり、日々、数えるばかりですが各地から訪れるようになりましたよ」と言われました。

 そんなさぬき市の福祉ゾーンのコアである、行基苑の紫陽花は7月中旬までが楽しめるとのことです。

(記者:笠井 隆宏)

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