2008年06月22日(日) 14時21分

どうも被調査人はクサい〜市民記者が検証した「探偵の仕事」（5）（オーマイニュース）

　依頼者と探偵のトラブルの相談から、市民記者としてことの真相究明を引き受けた。しかし、調査に当たった心の中は、現役時代とはまったく違っていた。

　当時の私は30代前半で独身。家庭を壊し、壊さなくてもギクシャクさせる不倫に義憤を感じ調査対象に憎悪の念も持った。「依頼者の悩みを何とかしたい」と強い感情移入があった。しかし、40歳を過ぎ家庭を持った今、妻がそうした行動に出るのは夫にも責任があると思うようになった。

　私を突き動かしているのは義憤でもなく男性に対する同情でもない。約束したミッションを的確にこなし、真実を明らかにしたいと言う思いだけである。

◆3月29日、土曜日、晴れ◆

13時32分　ホームセンター着
14時04分　「妻が家を出た」との連絡を受ける
14時26分　被調査人（妻）の車両が駐車場に現れる
14時30分　尾行開始。資材売り場入り口より入店
14時32分　失尾（見失う）。入り口脇のエレベーターで上階へ行ったと思慮される。エレベーターは2階で停止
14時36分　2階を検索るすも、被調査人の姿なし
14時56分　1階を検索するも、被調査人に姿なし
15時34分　駐車場に被調査人の車両があることを確認。2階もしくは3階の駐車場で交際相手と待ち合わせ、交際相手の車両に乗ったと思慮される
16時11分　2階駐車場から店内に入るところに設置してある喫煙コーナーにて張り込み開始
16時50分　2階駐車場に被調査人現れる。乗車車両の確認に至らず
16時56分　駐車場に戻り、被調査人車両にて張り込み
17時20分　食料品・洗剤などの買物袋を下げた被調査人が車両に乗り込み出発

──この日の調査終了

　午後2時32分に到着した被調査人は、周りを見回すなど相当警戒をしていた。通常、不倫をしていても「まさか自分が探偵を付けられている」などとは思わない。異常な警戒心が気になった。2階に上がり店内の通路を通り、駐車場口まで警戒されれば尾行は難しいと感じた。

　被調査人は、尾行調査が難しいと思われるパターンを確立している。それゆえに同じパターンを繰り返すことが思慮される。

　また、午後2時32分の失尾から午後4時50分に再び現れるまで、2時間18分。その間に不貞関係が持たれているとするならば、比較的近いホテルにて会っている可能性が高い。

　そのため、カーナビにて半径10キロのホテルをチェック。さらに自宅（大阪）方面は避ける公算が大きいため、京都方面をカーナビに入力することにした。

◆4月12日、土曜日、晴れ◆

13時10分　ホームセンター駐車場着。2階駐車場にて車中より張り込み開始
14時28分　自宅を出た、との連絡あり
15時40分　被調査人、2階駐車場に現れず
15時47分　被調査人の車両、ガーデニング用品売り場近くの駐車場にあることを確認
16時27分　店内検索するも被調査人を確認できず
16時30分　この日の調査終了

　2階駐車場が込んでいたため、3階で待ち合わせたとも考えられる。現役時代なら1〜2名のスタッフを配置し、携帯電話で連絡を取りながら調査することにより失尾は免れた。

　しかしながら、長期にわたる調査も視野に入れ、被調査人の視界に入ることは極力避けたいので、緩い張り込み・尾行とすることにする。そして男性には極力、刺激の強い情報は与えないようにした。業を煮やした夫が、不完全な情報を元に妻に詰め寄る可能性があるからである。

　また、被調査人である妻は警戒心は強いものの、「現在の会い方が完ぺき。発覚することはない」と考えているため、同じ行動パターンを繰り返していると思われる。

　人間の頭の中に「完ぺき」はそう多数存在できない。むしろ、ノーガードで気楽に会っているカップルを調査する方が骨が折れる。

　2階の駐車場から不倫相手である男の車に乗り込む機会が必ずあるはずだ──。そう信じて、しばらく2階駐車場をメインに待ち伏せすることにした。難点はホームセンターは撮影禁止となっており、頻繁に望遠レンズを付けたカメラを振り回せないことだ。

　だがどうしても「車に乗り込むところ」「ホテルに入る、もしくは出るところ」「車から降りるところ」は写真に撮る必要がある。

　そこで、2階駐車場に止めた私のワンボックスの後部座席から、撮影の機会を待つことにした。

〈全8回、つづく〉

（記者：湯浅 秀昭）

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