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2008年06月21日(土) 03時13分

「ネットでも無視された」加藤容疑者が供述読売新聞

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件で、死亡した7人に対する殺人容疑で20日に再逮捕された派遣社員加藤智大容疑者(25)が「現実社会でもインターネットの世界でも孤独だった。自分の存在を気づかせようと思ってやった」と供述していることがわかった。

 警視庁は職場でのトラブルに加え、ネットでの書き込みを無視されたことも犯行の要因になったとみて調べている。

 同庁幹部によると、加藤容疑者はこれまでの境遇について、「(高校時代に成績が下がるなどして)両親に捨てられたと感じた」「彼女がいなくて寂しかった」「誰でもいいから構ってほしかった」などと様々な不満を口にしている。

 その一方で、「現実の世界では嫌なことがあっても人に言えず、ネットの社会にのめり込むようになった」と供述、挫折や孤独感を埋めるために携帯サイトの掲示板に頻繁に書き込むようになったことも認めている。

 しかし、加藤容疑者の書き込みにはほとんど反応はなく、「ネットでも無視された」と感じるようになったといい、注目を集めるため事件を起こそうと考えるようになったとみられる。「どうせやるなら大きな事件をやろうと考えた」「ネットに(犯行予告を)書き込んだので、もう引き下がれないと思った」とも話しており、警視庁は、加藤容疑者が、サイトに書き込むことによって自らを犯行に駆り立てたとみている。

 ◆容姿や女性に過剰なコンプレックス◆

 「不細工なおれは存在自体が迷惑」「彼女いない、ただこの一点で人生崩壊」。加藤容疑者が残した携帯電話サイトの書き込みの中でも特に目立っていたのが、自分の容姿や女性への過剰なまでのコンプレックスだった。

 「これ、好きで集めているんですよ」

 昨年11月以降、静岡県裾野市の自動車工場で一緒だった同僚は、加藤容疑者が少女漫画のキャラクターのシールを集めていることをうれしそうに話していたのを覚えている。

 加藤容疑者は「月に2回は秋葉原に行く」「メード喫茶に通っている」と得意げに語り、3月ごろには同僚数人を連れて秋葉原を案内した。カラオケではアニメのテーマソングを熱唱、周囲には深刻な悩みがあるようには映らなかった。

 「生身の女性は裏切るけど、アニメのキャラクターは裏切らない」と、女性への根深い不信感を漏らしていた加藤容疑者。その一方で、秋葉原ツアーの前後、同僚の男性は、加藤容疑者が同じ職場の女性を「好みだ」と語ったのを聞いたことがある。しかし、「直接相手に好意を伝えた様子は見受けられなかった」という。

 別の同僚に交際相手がいたことを知ったのは事件の少し前。加藤容疑者は「祝福したい」と笑顔で語っていたが、携帯サイトには、嫉妬(しっと)心をぶつけるように「どす黒い感情が抑えられない」などと書き込んでいた。この書き込みをした6月4日未明以降、掲示板には「醜い顔だ」など、自らを極端に卑下する内容が、以前にも増して目立つようになった。

 当時の加藤容疑者は工場で「解雇通告」を受けてから自暴自棄な言動が目立っていた。作業着をめぐる職場でのトラブルをきっかけに犯行を決意したとされるのは翌5日ごろ。職場や両親への不満に加え、内に秘めていたコンプレックスも加藤容疑者の暴発を後押ししたのか。

 6月4日の書き込みにはこんな言葉もあった。

 「彼女さえいればこんなに惨めに生きなくていいのに」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000063-yom-soci