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2008年06月20日(金) 16時40分

同性愛者のコミュニティも登場 本格化する企業の「ダイバーシティ」ダイヤモンド・オンライン

 「社内に同性愛者のコミュニティがある」と聞いたら、耳を疑う人も多いだろう。しかし、それを奇異に感じるなら、あなたは「時代遅れのサラリーマン」と言われても仕方がないかもしれない。

 現在、ダイバーシティに積極的な企業が増えている。ダイバーシティとは、グローバル化が進んで社会が変化するなかで、性別、国籍、年齢、宗教などの「壁」を取り払い、さまざまな立場の人が能力をフルに発揮できる環境を整えるという、企業戦略の一環だ。一般的にその対象は、女性、高齢者、障害者、外国人、同性愛者などとされている。

「同性愛者のコミュニティ」を設けているのは、リーマン・ブラザーズ証券。同社はLGBT(性的マイノリティー)の人権擁護と活用を目指している。毎年数回に渡り、都内有名大学のLGBTサークルなどに声をかけ、優秀な人材を採用しているのだ。ちなみにLGBTとは、ゲイ(男性の同性愛者)やレズビアン(女性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害者)の頭文字だ。

 社内に設けられたLBGLN(リーマン・ブラザーズ・ゲイ・アンド・レズビアン・ネットワーク)は、同性愛者の社員が、対話やイベントを通じて親交を深める貴重な場となっている。同性愛者同士の結婚を皆で祝福したり、識者を招いて講演会をするなど、雰囲気はアットホームだ。

 社内には、女性や障害者の支援を行なうコミュニティもある。「各コミュニティの参加者は垣根を越えて仲が良い。昨年は皆で富士山に登り、参加者の寄付金が障害者の国際団体に寄付された」(関係者)という。

 今や欧米では当たり前となったダイバーシティだが、日本企業の意識はまだまだ低い。同社の取り組みは時代をかなり先取りしている。

 そもそも、日本企業がダイバーシティを重視し始めた背景には、社会構造の変化がある。少子化により、今後は優秀な社員を多く採用するのが困難になる。CSR(企業の社会的責任)も重視されるようになった。そのため、多様な人材を活用することが急務となっているのだ。

 障害者を例に取れば、採用に積極的なのがトヨタ自動車やKDDIなど。日本IBMでは、脊椎を痛めて車イス生活を余儀なくされた社員や、事故で片腕が動かなくなった社員が、生き生きと働いている。

 特に女性の就業支援については、先進的な取り組みが行なわれているケースが多い。たとえば、仕事と家庭の両立などに悩み、「若手女性総合職の離職率が半数を超えるのが当たり前」という食品業界では、カゴメが女性社員の活躍を推進する「リリコプロジェクト」を立ち上げた。「第3子以降の出産には、1人当たり出産祝金100万円を支給する」という、破格の支援制度を設けているのが富士フイルムだ。

 女性の昇進支援を行なう企業も少なくない。帝人は女性幹部の育成プログラムを設けており、選ばれた女性には執行役員クラスのメンター(助言者)をつけて指導するほどの徹底ぶりだ。P&Gでは、全社員の評価項目にダイバーシティへの貢献度を組み込んでいるため、「昇進の壁」はなきに等しい。今や女性部長職の割合は日本企業平均の10倍、20%を超えた。

 グローバル化が進む昨今、企業や社員は「人材の多様化」を受け入れるべき時期にさしかかっているのだ。

(ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

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