記事登録
2008年06月20日(金) 17時15分

仕事とあたし、どっちが大事なの!?〜亀山早苗コラムオーマイニュース

 かつて「男に『仕事が忙しい』と言われたら、それはもう彼女に飽きた証拠。どんなに忙しくても、連絡をとる時間くらいあるはず」と恋の法則として、女性の間では言われていたものだった。

 ましてや今は携帯電話やメールがある。連絡をとるのは決してむずかしいことではない。

 「ただ、それすらする気力がないというのは本当にあることなんですよ」

 疲れた表情で、功さん(34歳)はそう言った。この春から人事異動で別の部署になると同時に「信じられないような忙しさ」に見舞われている。彼に期待してかわいがってくれた大先輩が引っ張ってくれて異動しただけに、期待を裏切れないと連日残業の日々だ。ところが1年半ほどつきあっている3歳年下の彼女は、彼の状態をなかなか理解してくれない。

 「前は昼休みや夜、毎日のようにメールしあっていたんですが、今は昼休みもランチョンミーティングがあったり、あるいは先輩と一緒だったりで、なかなか時間が自由にならない。夜は残業や取引先との商談がらみの会食もある。彼女も会社員ですから、深夜のメールは控えます。週末もほとんど仕事だったり、寝ているだけで終わってしまったり。まだ心身ともに慣れないんですよ。でもこの間、彼女に『気持ちがあれば連絡くらいできるはず』と責められたんです。彼女のことは好きだけど、今はそうっとしておいてほしい。そう思うのは僕のわがままなんでしょうかね」

 もちろん、まったく連絡しないわけではない。4月から仕事優先の日々を送っているが、彼女とは月に1・2回はともに過ごす時間をとっている。女性はそれでは不満だろう。ましてや毎日のように連絡をとりあっていたのが、なかなか連絡がとれない状態になっているのでは不安も募るはずだ。

 「彼女は僕のことがわからなくなった。気持ちが見えないと泣き言ばかり言ってくる。気持ちは変わってない、ただ本当に大変なんだと言ってるんですが、彼女の不安はぬぐいきれない。ときどき、彼女の不安や愚痴に対して、いらいらすることがあるんです。こっちの都合だから申し訳ないと思ってはいるんだけど、わかってくれよという気持ちもあって」

 男性は基本的に不器用だ。ひとつのことにまい進すると周りが見えなくなる。わかっているがフォローしきれなくなるのかもしれない。無意識に優先順位をつけてしまっている可能性もある。

 「彼女は実家住まいですが、僕はひとり暮らしなので、合鍵がほしいと最近、言われているんです。そうすれば少なくとも、彼女が僕の家で待っていて顔を見ることはできるから、と。だけど、帰ったらバタンキューで寝てしまうか、あるいは明日の仕事の準備をするか、それでもなければひとりでのんびりするか。そういう時間も必要なんです。彼女にはひとりでいる時間がほしいとは言えずにいますが」

 適当に理由をつけて、合鍵は渡していない。それがまた、彼女の不安をあおっているのだろう。

 「とりあえず半年くらいたてば、少しは落ち着くと思うんです。ただ、彼女にそう言うと、今度は半年たったときにあれこれ言われるんだろうなと思うと、それも言えない。自分でも、いつになったら少し落ち着いて仕事に取り組めるようになるのか、余裕が出てくるのか、今はとにかく見えない状態。彼女としてはいつまでこの状態が続くのか知りたいんでしょうけど、期限を区切ると言質をとられるようで怖くて……」

 先日、3週間ぶりで会ったときも、「あんまり放っておくと、どうなるかわからないわよ」と言われた。脅迫的ではなく、むしろ弱々しい口調だったけれど、それだけに彼は何も言い返せず、心の中で「もっとしっかりしてくれよ、ひとりで大丈夫と言ってくれよ」とつぶやいていた。

 好きな人に会いたい、好きなら時間はとれるはず、と女性はシンプルに考える。だが、男性にとって、新しい部署での仕事は緊張の連続。

 「私じゃ支えにならないの、と彼女に言われたんですが、そういうことではないんですよね。僕にとっては今が正念場。大事な時期だということをわかってくれることが一番の支えなんですが……」

 男女の気持ちの違いを乗り越えるには、どちらかが妥協するしかないのだろうか。彼がもっと言葉を尽くせば、彼女の気持ちをなだめることはできるのではないだろうか。それさえする時間と気持ちの余裕がない、というのが彼の言い分なのだけれど。

(コラムニスト:亀山 早苗)

【関連記事】
「恋愛の現場から—いまどきの男と女」をもっと読む
亀山 早苗さんの他の記事を読む
【関連キーワード】
恋愛

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000006-omn-peo