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2008年06月20日(金) 12時10分

香川の学校法人、退職金の分割支給が明るみにオーマイニュース

 香川西高校や短大、専修学校を運営する学校法人瀬戸内学院(香川県三豊市)が、教職員の退職金のうち、未払い分を運転資金として流用していたことが5日に明らかになりました。

 関係者の話や地元メディアの報道によると、06年度末に退職した教職員8人の退職金を分割支給とした上で、理事会にも諮らず未払い分を学院の運転資金に充てていたというもの。一括支給したかのように見せかけるべく、退職者の領収書を偽造、全国および県の私学関係の退職金関係団体に提出、退職金用資金の交付を不正に受けて、負債返済や教職員の給料など、経営悪化を理由に経費に充てていたとのことです。

 私立高校を所管する県学事総務課など関係機関が補助金の返還請求や学校運営の適正化指導をすることとなりました。なお、退職金の分割支給は労働契約法では禁じられています。

■背景には香川特有の教育土壌

 香川県内の私立学校での不祥事といえば、どちらかといえば不当解雇に関するものが主流でしたが、経営にかかわる、お金にまつわるものは今回がおそらく初めてでしょう。

 今回の背景には、少子化による生徒数の減少、香川の教育土壌、それに学校教育のカリキュラムと3つほどポイントが挙げられます。殊に香川の教育土壌です。

 キャリア官僚あるいは一流企業へ進むには、古くから「有名公立進学校から一流大学」がエリートコースと言われる土地柄。強いて言うならば、義務教育も幼稚園、小学校、中学校と香川大学付属が一番のインテリと言われるほどで、私学の卒業生は落ちこぼれのように見られる教育土壌です。

 私立中学校が昭和40年代前半にかけて数校あったころは、記者の親の世代にはそこを卒業して、それぞれの系列の高校でなく公立高校へ進学した人もいたほどです。

 また、少子化対策で私学全体が奔走しているのが、地元では“マリン通”と呼ばれる生徒の獲得。これは瀬戸大橋開通後から、岡山からもマリンライナー通学の生徒を獲得、授業料も一部免除などで呼び込んでいるものです。

 香川大学は、来年から四国の国公立大学で初めて入試を大阪と東京でも行うことを発表。大学側は「地方にしかできない学術を魅力的に売り込むため」としています。しかし、国立大学が私立並みに実施すると言うことは、マリン通頼みも頭打ちが来ているのではないでしょうか。

 そしてカリキュラム。家政科・養護科のある瀬戸内短大と歯科衛生と福祉系の学部がある瀬戸内総合学院。ここ10年のうちに香川県立医療福祉大学および医療短期大学の開学や香川医科大学(現在の香川大学医学部)に看護学科が設けられたことが挙げられます。

 これらの理由から、香川西高校が黒字経営とはいえ、法人全体が危機的状況となっているのではと分析しています。退職後、私立大学に招かれて教鞭(きょうべん)を執る元県立高校校長は、

 「ファッションショーや料理教室と地域密着のイベントを行う、家政科や食物科のある私立高校もあるくらい、どの学校も優秀な生徒を獲得するのに懸命で、差別化も図っています。それでも、いまだに公立優位がものを言う土壌は変わっていない」

と、毎年私立高校が集まって催しているイベントを例に話していました。

 かつて、『翼をください』(1988年1月放送、NHK)という単発ドラマがありました。県立高校に行けなかった落ちこぼれが通う、評判の悪い私立高校の生徒たちが奮闘するものです。

 確かに、香川でもイメージアップに強化を図って、以前とは違い優秀な生徒を取るようになりました。それでも、記者も幼少時から聞く香川独特の教育土壌があるからこそ、学校経営の難しさを知るものとなりました。

(記者:笠井 隆宏)

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