記事登録
2008年06月20日(金) 12時08分

無料・オンライン化された「知恵蔵」を読むオーマイニュース

 朝日新聞社が自由国民社の「現代用語の基礎知識」の向こうを張って1989年に刊行した現代用語辞典「知恵蔵」は、2006年の11月に発行された 2007年度版をもって休刊となった。その代わり、2008年の6月12日に、朝日新聞社は株式会社ECナビとともに「みんなの知恵蔵」という名称で、これまで蓄積してきた知恵蔵の内容を検索できるオンラインサービスを始めた。なお、株式会社ECナビは価格比較サイトなどを運営し、ネットの業界では有名なサイバーエージェント等を株主に持つネット系の企業である。

 「みんなの知恵蔵」のトップページには、検索キーワードの検索の多さによる順位などが表示され、なかなか使いやすい。表紙のキーワードの並べ方などを見ると、最近よくある検索系のポータルサイトに似ていなくもない。

 ためしに「オーマイニュース」を引いてみると、オーマイニュースが始まるアナウンスがあったときの解説がまず冒頭に出てくる。また、関連の asahi.comの記事が検索されて出てくる。この記事には、2007年10月27日付の、オーマイニュースの市民記者である宮本聰さんの写真入り記事『市民記者「モノ」申す』が検索結果の筆頭に出てくる。

 面白いのは「みんなの選んだサイト」という項目があり「このキーワードに関連するサイトを教えてください」という入力項目で閲覧しているユーザからの情報も取り込めるようになっている、という工夫だ。

 最近は米国、日本ともにGoogleのような、自動でのネット情報の収集ではなかなか追いつかない、詳細な情報の収集に、ユーザからの情報を利用する、という新しい検索エンジンの作り方を取り入れているところが少しずつ増えてきた。有名なところでは「mahalo」「chacha」「Wikia」日本だと、国立情報科学研究所がこの方法での「人力検索エンジン」の研究をしている。検索エンジン業界は「Googleの次」を狙っていて、その仕組みの中心になるのが「人力」であることがよくわかる。

 また「みんなの知恵蔵」にはGoogleのような、自動収集によって検索された情報も同時に表示されているなど、ちょっとした調べものには大変便利にできている。検索エンジンはOverture社のものと、はっきりとしたただし書きもついているので、慣れている人であれば検索エンジン個々の癖も考慮に入れることができる。

 多大なコストをかけ、一定以上の信頼のおけるニュース記事と、Webの自動検索、そしてユーザの口コミ情報などをキーワードでくし刺しにして一覧して見ることができる「新しい検索サイト」の入り口に、やっとたどり着いた感じがする。実際に使って見ると、まだアクセスもそんなにないらしく、軽快に動くのもうれしい。

 ネット時代に向けた「知恵蔵」の休刊と、オンライン版「みんなの知恵蔵」へのリニューアルは、人力も含めた、新しい時代の検索エンジンのあり方をそれとなく示す、ということはできたと言ってよいかもしれない。

 ただ、辞書なども含めた「紙の媒体」にある「読む」楽しみがいまひとつないのは惜しいところだ。以前の拙記事『これからの「電子新聞」はこうなる?!』でご紹介した、新しい時代の新聞にある「紙を読む感覚」がこのサイトに付加できれば、大変に面白いものになるだろう、と記者は思う。

(記者:三田 典玄)

【関連記事】
三田 典玄さんの他の記事を読む
【関連キーワード】
検索エンジン

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000003-omn-inet