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2008年06月20日(金) 12時05分

築地市場を分断?! 都の道路建設説明会が大荒れオーマイニュース

 「築地市場が豊洲へ移転するので、地下に作る予定だった道路を、地上に造ることになりました。ついては来月から測量を行いますのでご協力をお願いしたい」

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……なんてふざけた話の説明会が6月18日夜、築地市場のすぐ近くにある小学校(東京都中央区)の体育館で開かれた。

 豊洲への移転問題で揺れる東京中央卸売市場(築地市場、中央区)。そこでは同時に、市場敷地を突き抜ける環状2号線延伸部の建設計画が進んでいる。

 環状2号線とは、江東区有明から中央区、港区を経て千代田区神田を結ぶ全長14キロメートルの幹線道路。

 このうち、今回の事業区間である中央区晴海3丁目から同銀座8丁目を結ぶ延長約1.6キロメートルは、2009年度着工、2015年度完成をめざしている。

 都のパンフレットで示された図をご覧頂きたい。

 赤の点線が延伸部。太線で強調されているのが、臨海部と都心部を結ぶ今回の工事区間だ。築地地区の大部分は築地市場が占めている。環状2号線が、築地市場のなかを通る道路であることが分かる。

 都によると、道路計画は1993年に決定。当時は市場を築地の現在地で再整備する予定だったため、地下トンネルを作ることになっていた。

 しかし、2001年12月、都が市場の豊洲移転を決定したため計画を再検討。跡地利用の観点から、地下トンネルはやめて、地上道路とし、隅田川には橋をかける構造に変更した。

 変更の住民説明会が最初に開かれたのは2006年10月。2007年9月に都市計画審議会を通り、2007年12月に事業認可が下りている。

 築地市場の移転が都の計画通りに進んでいるのなら、道路の話も納得できるかもしれない。

 けれども、市場移転計画は、豊洲の新市場用地の土壌汚染を前に揺れている。

 東京ガスの工場があったことに由来する有害化学物質による汚染で、今年5月にも、環境基準の4万3000倍というベンゼンが見つかったばかりだ。

 移転を前提とした道路計画の地上への変更が検討・決定されたのと同じ時期に、都はもう一方で専門家会議を開き、豊洲の土壌の詳細調査をしている。そして、昨年11月に環境基準値の1000倍のベンゼンが確認され、移転に疑問符がついたタイミングで、道路地上化に事業認可を下している。ちぐはぐである。

 18日に開かれたのは用地測量のための説明会。小学校の体育館には、パイプ椅子がいっぱいに並べられ、巨大スクリーンが掲げられた。説明は、そのスクリーンに映された15分ほどのスライドショーであっさり終了。

 しかし本番はそのあとだった。市場関係者や中央区住民、都民らから、激しい批判がぶつけられた。

 「移転するとはまだ決まっていない。なぜ移転を前提にした道路建設の説明会が行われるのか。早く橋をかけて豊洲に市場を持っていく、お金をかけたから築地で再整備はできない、という方向に持っていくのではないか? 築地市場の現地再整備つぶしのための道路工事だ」(市場関係者)

 「汚染の再調査をしているときに、事業の認可申請していたなんて犯罪ではないか。都が都民の健康を切り捨てたといっていい」(渋谷区住民)

 「地下でいいではないか。なぜわざわざ橋をかけて地上化するのか」(別の都民)

 2006年10月の住民説明会で、発言者全員が道路の地上化に反対したのに、計画が進められていたことも指摘された。

 「説明会が終われば計画通りに進めるというなら、都民・区民をばかにしたやり方だ」(中央区住民)

 前日の都議会で、与党・公明党の議員が「築地市場の移転ありきの議論はやめるべき。(豊洲への移転には)再検討が不可欠だ」と発言したばかりのタイミングだ。だからかどうか、住民らの勢いも強い。

 さらに、別の住民が、築地市場の文化的価値に触れたことについて、答弁に立った都第一建設事務所工事課長が「市場移転と道路建設を混同されているようですが……」と切り返そうとすると、

 「あんたたちの作ったパンフレットにそう書いてあるんじゃないか!」

 「(道路建設と市場移転の問題は)同じだよ!」

と怒号が飛んだ。

 この説明会は18日から20日までの3日間、中央区内の計3カ所で開かれる。一度決めた計画はなかなか変えないのが行政とはいえ、7月の専門家会議の提言次第で道路計画に変更もあるというのに、住民説明会を、6月も下旬のいま開く意味があるのか。それとも、もともと住民説明会に意味など置いていないのか……

(記者:軸丸 靖子)

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