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2008年06月19日(木) 09時00分

原料高で利益大幅減 値上げ交渉に悩む菓子メーカーダイヤモンド・オンライン

 日頃コンビニで手にする菓子の内容量が、昔より減っていることをご存知だろうか。たとえば江崎グリコの「ポッキー」は、昨年10月以降、内容量が従来の一箱当たり80グラムから72グラムへと減った。本数に直すと、ポッキー2本分ほどだ。

 その理由は、原料高による製造コストの大幅アップである。ポッキーを例にとれば、昨年後半から、主原料となる小麦、粉乳、食物油脂、カカオ豆などが軒並み高騰している。そのため同社は、減量による「実質値上げ」を行ない、コストカットをしているのだ。

 これまで業界では、増量や安売りによる熾烈な「薄利多売競争」が行なわれてきた。昨今の原料価格高騰は、競争で疲弊した菓子業界にさらに打撃を与えているのだ。

 とはいえ、菓子の値上げは容易ではない。若年層が主力購買層の菓子は単価が低く、10円値上げしただけでもお客は強い抵抗を感じるため、安易な価格の「棒上げ」は命取りとなる。そのため各社は、価格を据え置いて内容量を減らす代わりに、商品に付加価値を付けてお客にアピールする作戦を取ってきた。グリコは、パッケージをリニューアルして色や文字を見やすくしたり、袋も開けやすくするなど、工夫に余念がない。

 しかし、メーカーが値上げに難航してきた大きな理由は、他にもある。「他業界のメーカーと比べて流通過程への発言力が弱い」(食品業界に詳しいアナリスト)のだ。菓子メーカーは卸売業者や小売店に多くのインセンティブ(奨励金)を支払って、商品を大量にさばいてもらっている。大手は数年前からオープン価格を導入して、不明瞭なインセンティブの廃止・削減に取り組んできたが、各社とも特売の「原資」となる販売促進費までは、なかなか合理化できない。

「卸は利益を最低1割よこせ、小売は2割よこさないと特売をやってあげないなどと、意識は旧態依然のまま」(メーカー関係者)。ある営業マンは、「違法性の高い行為と知りつつ、いつ公取に刺されるかビクビクしながら、大型小売店の棚卸しを手伝いに行っている」と明かす。

 これでは、リベートを削減してコストの穴埋めにするのは難しいし、出荷価格の交渉でも頭が上がらない。

 しかし、昨年末〜今年前半から、耐え切れずに値上げに踏み切るメーカーが続出。森永製菓は昨年12月から、「チョコボール」などの出荷価格を15%前後、明治製菓は今年2月から「ミルクチョコレート」などを内容量変更込みで平均12%も値上げした。むろん、「卸売業者や小売店との価格改定交渉は難航の連続だった」(関係者)という。

「さすがに直近は、理解を示してくれる卸売・小売業者が多くなった」(関係者)とはいえ、業界を取り巻くコスト圧力は相変わらずすさまじい。2008年3月期の業績を見ると、グリコが対前年比約45%の営業減益、森永が同約20%の営業減益、明治が同約7%の経常減益に陥っている。

 今後もコスト圧力は強まるばかりで、流通過程との「値上げ交渉」に悩むメーカーは減らないだろう。子どもに夢を与える菓子業界の苦悩は、かくも深いのである。

(ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

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