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2008年06月19日(木) 19時48分

同性婚“解禁第1号”は80代の女性カップルオーマイニュース

 米カリフォルニア州最高裁が5月の判決で同性カップルの結婚を認めたことを受け、この判決が発効した6月16日、サンフランシスコ市で80代のレズビアン・カップルが“同性結婚式第1号”を挙げた。ロイターが伝えた。

 別の報道によると、同性結婚反対派団体は、同性結婚の禁止規定を設けるよう、州憲法の改正を目指し、すでに住民投票に必要な数の署名を集め終えている。もしも州憲法の改正案が可決すると、同性結婚を認めた州最高裁の判決は無効となる。

 80歳代のレズビアン・カップルが宿願の結婚式を挙げた場所は、教会ではなくサンフランシスコ市庁舎だった。取り仕切ったのも聖職者ではなく、同市のギャヴィン・ニューソム(Gavin Newsom)市長だった。

 州最高裁の判決を覆すために、それより効力が強い州憲法の改正を目指している同性結婚反対派は、同性愛がもとよりキリスト教の教義に沿わないと主張し、かたくなな抵抗を続ける「キリスト教保守派」だ。旧約聖書の中には、同性愛者の処罰を定めた戒律が記されていると言われる。

 たとえ法制度的に同性結婚が認められても、実際に同性カップルの結婚式を行うとなると、同性愛を教義的に受け入れない教会での挙式は難しくなる。サンフランシスコ市庁舎はもともと結婚式が数多く執り行われる場所だが、教会では困難なため、市役所を選んだ可能性はある。

 日本のキリスト教徒人口は、総人口の約1%〜数%とも言われるが、いずれにせよ極めて少数だ。従って、キリスト教の教義に基づく規範意識が日本社会を支配する状況はない。また、そもそも宗教意識が高くない日本人にとって、「神や先祖に祝福されなければ結婚と言えない」といった“こだわり”は少ない。現実に、役所へ結婚届を出しただけで、結婚式を挙げない夫婦が多数あるし、無宗教の結婚式さえ堂々と執り行われている。

 アメリカの多くの州やヨーロッパ諸国(いずれもキリスト教文化圏)では、結婚に準ずる「パートナー登録制度」が広く採用されている。この背景には、同性カップルに対する法的権利義務を男女の結婚と同じレベルで与えようとの社会意識が高まる一方、宗教(キリスト教)が介在する結婚の概念を同性カップルにまで当てはめようとすることへの社会的抵抗感が根強いジレンマがある。

 いわば、その妥協策がパートナー登録制度なのだが、同性カップルの側は、「神に祝福されなければ結婚と言えない」とのこだわりから、同性結婚の実現をあきらめない。カリフォルニア州で繰り広げられている対立は、キリスト教文化圏でのそうした概念闘争を如実に反映する形となっている。

 キリスト教的同性愛禁忌の規範意識が薄い日本でこそ、実は同性結婚も、同性カップルを含むパートナー登録制度も、実現や受容が容易であるはずなのだが、皮肉なことに日本の世論には、まだそうした意識の高まりが乏しい。

 報道によれば、カリフォルニア州で同性結婚式第1号を挙げた80代のレズビアン・カップルは、50年以上も前に出会い、アメリカで最初の同性愛者支援団体を立ち上げた「全米同性愛活動家の草分け的存在」だと伝えられている。

 後進の日本でも、これから徐々に同性愛、同性愛者についての理解が高まり、同性カップルに対する法的権利義務保障の必要性が、広く一般社会で認知されることを、多くの同性愛者たちが切望している。

(記者:中井 伸二)

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