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2008年06月19日(木) 19時50分

技術者の発表でホンダイズムを実感オーマイニュース

 「2008 JCF」が2008年6月9日、10日の2日間、東京プリンスホテル(東京都港区)にて開催された。JCFは日本アイ・ビー・エム株式会社とダッソー・システムズ株式会社が主催する、PLMソリューションの最新情報や先進事例を紹介するフォーラムである。

 PLM はProduct Lifecycle Managementの略で、“製品ライフサイクル管理”と訳される。工業製品の企画・開発から、設計・製造・生産・出荷後のメンテナンス、販売停止まで製品の全過程を一貫して包括的に管理する手法である。各部門が製品の情報を共有することで、ニーズに即した機動的な製品開発や効率的な生産を図る。

 「2008 JCF」では、『New Ways with 3D:Next Digital Monozukuri──3Dで拓くものづくり新時代』がテーマとなっている。PLM自体は幅広い内容を含むが、各企業の展示ブースではテーマに沿って、製品データを3次元のデジタルデータとして共有するソリューションが中心となる傾向が感じられた。

 セッションではさまざまな企業が自社のPLM適用事例を紹介した。中でも自動車メーカーのホンダは株式会社本田技術研究所が1つ、ホンダエンジニアリング株式会社が2つと合計3セッションを提供するほどの力の入れようであった。本田技術研究所は本田技研工業株式会社の研究開発部門、ホンダエンジニアリングは生産技術部門を分社化した子会社である。以下、ホンダのセッションを2つ紹介したい。

■「設計者自らがCAEを用いてみて」

 本田技術研究所四輪開発センターの大薗耕平・主任研究員のセッション「設計者自らがCAEを用いてみて」では設計者自身によるCAE (Computer Aided Engineering)の取り組みを発表した。

 CAEは設計・開発工程を支援するコンピューターシステムで、強度や耐性の計算などを行う。計算結果の解析を解析専門家に依存するのではなく、設計者自身で取り組む点がポイントである。

 難易度の高い設計対象を徹底的にCAEツールで可視化していると説明した。一方、新規にCAEツールを導入する場合、最初は設計者にとっては大きな負担増になる。その点についてマネジメントが考慮する必要があると力説した。

■「設計者・技術者が喜ぶデジタル手法とは」

 ホンダエンジニアリング車体設備生産部の松田英次、竹内康一の両氏によるセッション「設計者・技術者が喜ぶデジタル手法とは」ではCAD(Computer Aided Design)製品CATIA使用事例と効果が紹介された。

 設計段階での3Dモデルの完成度が低いと、後工程でさまざまな問題が噴出する傾向にあると説明する。完成度の差は属人的なスキルや設計要件の確立の度合いで左右されるため、徹底した標準化を実施しているとする。一方で標準化の弊害として、革新的な技術進化が生まれにくくなるとの懸念が生じている。

 技術者のプレゼンテーションと言えば専門用語の羅列で難解なものになりがちだが、ホンダの発表はメッセージ性が非常に明確であった。課題と解決策、それによって生じるさらなる課題を明快に説明する。専門知識を有していなくても、何が問題であり、どのように解決するのかを理解できる。ホンダの企業風土を特色づける言葉としてホンダイズムがある。まさにホンダイズムが今も脈々と息づいていることを感じさせるセッションであった。

(記者:林田 力)

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