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2008年06月18日(水) 11時38分

問責決議 VS 信任決議オーマイニュース

 参院は、福田首相に対する問責決議を6月11日、衆院は、内閣信任決議を12日、それぞれ可決した。

 野党提出の問責決議 VS 与党提出の内閣信任決議とでもいうべきか。

 参院版内閣不信任決議とも呼ぶべき問責決議は98年に、当時の額賀福志郎防衛庁長官に対して出されたことはあるが、首相に対する問責決議については、現行憲法下では初めてのことだ。一方、衆院での内閣信任決議は、92年、当時の宮沢喜一首相以来だという。

 この頻度から見ても、これらの戦術が国会戦術の常套手段ではなく、あくまで非常手段だといういことがわかる。しかし国民に緊迫感が伝わってこないのはなぜだろう。

 それもそのはず、民主党が主導する問責決議案は、ここ最近の国会で幾度となく遡上に上ったが、そのたびに立ち消えになっていた。

 問責決議案は、衆院の内閣不信任決議と違って法的拘束力はないものの、直近の民意を得た参院が下した決議だけにきわめて重い。

 その決議の意味を分かるからこそ、民主党は提出するタイミングにこだわってきた。衆院を解散に追い込むことが至上命令の民主党にとって、これ以上の戦略はない。だが、それゆえ、出すタイミングを逸してきたのも事実だ。

 だが、これまで国民はこの煮えきれない民主党の態度を何度も見せつけられてきた。そして、いつしか民主党の問責決議案を狼少年に重ねて見るようになってしまった。

 そこに出てきた今回の問責決議案。それも会期末を15日に控えて、である。さらに言えば、自ら出した後期高齢者医療制度廃止法案の審議を自ら拒否してである。与党でなくとも、これをパフォーマンスと呼ばず、なんと呼ぶのだろうか。

 これに対する与党の福田内閣信任決議案。当初は、問責決議案は単なる格好つけなどと、まるで相手にしないような態度でいたが、結局、信任決議を出すことになった。これは、野党の問責決議が政権運営に相当効いているという証しなのだろう。

 議院内閣制のわが国政治システムでは、議会の多数派が総理大臣を輩出することができる。つまり、議会の多数派が総理大臣を選ぶこのシステムは内閣信任決議そのものなのである。つまり、総理を選んだ議会の多数派を「政府与党」という呼ぶように、内閣と与党は一体なのに、それを野党の問責決議に対抗するために、わざわざ内閣信任決議を出すこと自体、時間と税金の無駄以外なにものでもない。

 このようなまるで緊迫感のないこの与野党の両決議だが、内心、これに国民世論が反応してくれることを願ってはいる。世論が自分の党に追い風となれば、仮に解散になっても「わが方に勝目がある」と思っている節がある。残念ながら現在の両党では、世論を動かすほどの力量はない。

 案の定、与野党の思惑とは裏腹に、国民は醒めた目でこれを見ている。

 韓国では、就任3カ月の李明博大統領が蜜月期間も開けないうちに、米国産牛肉輸入解禁問題で窮地に立っている。中高生がネットで呼びかけをした牛肉の輸入解禁反対デモが、一般国民を巻き込んだ大統領の退陣要求にまで発展した。この沸騰した世論の前に、全閣僚が辞任するという異常事態に陥った。

 このように、国民の多くがはっきりと自分の意思を示すこの韓国世論に、ある種の恐怖も覚えるが、羨望を覚えるのも確かだ。

 それに比べ、揮発油税の暫定税率や後期高齢者医療制度などが国民の怒りを買っている日本の政治だが、韓国のような激情的な世論は出てきそうもない。

 これは、どのように見たらいいのだろうか。

 もしかしたら、怒っても何も変わらないと、政治に対する希望を失っているのか。あるいは、本当は報道されているほど国民の生活は苦しくはないのだろうか。それとも、来たるべく総選挙まで、これらの怒りを封印させているのだろうか。

(記者:藤原 文隆)

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